l.dtd"> あなたの健康はお金で買えますか・・・? 【最新「死に方」事典】「肺炎3位」のカラクリ


【最新「死に方」事典】「肺炎3位」のカラクリ

『65歳過ぎたら、肺炎予防。』という西田敏行さんのテレビCMが話題になった。ご本人も「最近、肺炎で亡くなっている友人、仲間が多い」と言い、自身も予防接種を受けたという。

 このCMを見て「なぜ、いま肺炎?」と思った方も多いと思うが、日本人の死因の第3位に肺炎が入ったためと聞いて、納得したのではないか。日本人の死因は、よく知られているように第1位ががんで、第2位が心疾患である。ところが、最近、肺炎が急上昇してきた。

 たとえば、有名人の訃報で、死因が「肺炎」と発表されることが多くなっている。俳優の二谷英明さん、女優の森光子さん、歌舞伎役者の市川團十郎さんが、いずれも死因が「肺炎」と発表された。

 しかし、医者から言わせてもらうと、CMでキャンペーンしている「肺炎」と、高齢者の死因となる「肺炎」は違うものだ。

 一般の人間が思っている「肺炎」という病気のイメージは、風邪をこじらせたもの、風邪の重いものということだろうが、死因となる肺炎はこれとは違うのである。

 一口に肺炎といっても種類がある。1つは、イメージどおりの肺炎で、これは若い人もかかる。じつは、肺炎と風邪は違い、たとえば風邪は炎症個所がのどや鼻などの上気道だが、肺炎は気管支より奥にある。そのため、せき、たん、発熱などの症状は風邪よりはるかに重い。場合によっては呼吸困難で死に至る。その原因だが、風邪は主にウイルスだが、肺炎はウイルスの他に真菌という細菌に侵されるケースがある。ただし、肺炎を起こす菌は何種類も知られていて、原因となる菌によって効果があるクスリも違ってくる。

 肺炎は市中感染もあるが、病院や介護施設などで感染する例も多い。こういった場合、高齢の方がなりやすく、なると症状が重くなる。

 統計を見ると、肺炎による死亡者数のうち、約97%(約12万人)が65歳以上の高齢者によるものなのも、このためだ。

 ただし、高齢者の肺炎は、誤嚥(ごえん)による肺炎(誤嚥性肺炎)が圧倒的に多い。この誤嚥性肺炎というのは、本来、食道へ送られる食物や唾液中の細菌が誤って気管に入り、それが肺まで到達して起こる肺炎だ。この肺炎が重症だと、高齢者は死に至る。とくに、がんなどで末期治療を受けている患者は、この誤嚥性肺炎になるケースが多い。したがって、死因の第3位の肺炎というのは、このことを指すのである。

 高齢になるにしたがい、のどの食物を飲み込む機能が衰える。よく正月に、ご老人がのどにお餅を詰まらせて死ぬという事件があるが、大きく見ればこれと同じことだ。

 したがって、肺炎のテレビCMは、この事実を無視して、あえて「死因の第3位」を強調して、「予防接種」を勧めている。

 医療ビジネスは、じつに商魂たくましいと言わざるを得ない。

 ■富家孝(ふけたかし) 医師・ジャーナリスト。1947年大阪生まれ。1972年慈恵医大卒。著書「医者しか知らない危険な話」(文芸春秋)ほか60冊以上。

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