l.dtd"> あなたの健康はお金で買えますか・・・? 身近な人が熱中症になったら 応急措置は「FIRE」で


身近な人が熱中症になったら 応急措置は「FIRE」で

気温や湿度が上がり、熱中症が多発する季節になってきた。そこで、環境省主催「平成29年度熱中症対策シンポジウム」より、ビジネスパーソンに役立ちそうな3講演の内容を一つずつ紹介しよう。第1回は帝京大学医学部救急医学講座の三宅康史教授による「熱中症のメカニズムと対策―近年の傾向と環境保健マニュアルの紹介―」をお届けする。応急措置については「FIRE」(炎)がキーワードになるという。では、その「FIRE」とは何か?.

■熱中症は「夜間」「屋内」に多いは誤解?

 三宅教授はまず、統計の読み方から起こりがちな「熱中症の誤解例」を挙げていった。例えば、ある統計を見ると、熱中症による死亡推定時刻は日中が6割で夜間が4割。昼夜の差はあまりないように感じられる。また、東京都監察医務院の調査によると、2010年7月17日から8月6日までの熱中症による死亡者は95.8%が屋内で亡くなっており、屋外・車内で亡くなる人よりもずっと多い。

 「これらがいわゆる統計のウソ。死亡推定時刻が夜でも、熱中症の発症そのものは気温の高い昼間が圧倒的に多い。また、死亡者が屋内で発見されやすいだけで、直射日光の当たる屋外のほうがずっと危険です」と三宅教授は注意する。高齢者の場合、ずっと屋内にいながら熱中症になってしまう人も少なくないので「屋内」が安心というわけではないが、要は、どこで亡くなるかよりもどこで発症するか(どこが危険か)のほうがずっと重要ということだ。「熱中症で亡くなる場所は当然ながら病院が最も多いですが、病院が危険というわけではありません。『気温の高い昼間』『直射日光の当たる屋外』は特に気を付けましょう」

■余った熱を捨てられず、体温が上がった状態

 そもそも熱中症とはどのような病気なのか? 三宅教授は「体から余分な熱を捨てられず、脳が設定する体温よりも実際の体温が高くなっている状態」と説明する。 体でつくられたエネルギーのうち、約6割は熱に変わるという。気温が高いときや運動したときでも体温を一定に保つには、余った熱を捨てなければいけない。このとき重要なのが血液の量。血液が多いと、熱が血流に乗って体表に広がる毛細血管に運ばれ、冷やされることで体温を下げられるが、脱水状態になると血液量が減り、熱を捨てられない。熱の捨てにくさには、外部の環境(気温が高い、湿度が高いなど)や体の状態(低栄養、二日酔いなどの体調不良など)、行動(激しい運動、長時間の屋外作業など)なども影響しており、例えば、太っていることもリスクになる。皮下脂肪が断熱材になって熱が体内にこもりやすくなるのだ。その他、高齢者も熱中症につながるような環境を不快に思いにくいといった意味で熱を捨てにくくなっているという。

 そうした様々な要因で、体温が上がる。風邪を引いたときはウイルスを殺すため、脳が体温を高く設定して体温が上がる。それに対して熱中症の場合は、脳が平熱を保とうとしているにもかかわらず、外部の環境や体調不良、行動によって体温が高くなってしまうため、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体内の調節機能が破綻してしまうわけだ(図1、図2)。 熱中症は大きく2つに分けられる。炎天下など気温が高い中で体を動かすことで起こる「労作性熱中症」と、体を動かさなくても起こる「非労作性熱中症」だ。

■死亡者のうち、8割は「非労作性熱中症」

 前者は若者から中年が起こしやすく、圧倒的に男性が多い。一方、後者は高齢者に多く見られるタイプで、男女差はない。また、発症しても治療すればすぐに回復する労作性熱中症に対し、「非労作性熱中症は予後が悪く、熱中症による死亡者の8割はこちらのタイプです」と三宅教授は指摘する。

 それぞれ典型的な症例を見てみよう。

【労作性熱中症】18歳男子・アメフト試合中: キャプテンで中心選手だった。数日前より風邪気味で前日は緊張もあってよく眠れなかった。高校最後の大会で活躍を期待されていた。試合途中から吐き気と倦怠(けんたい)感、頭もぼんやりして手足のしびれを自覚。ハーフタイムにベンチに座ったまま動けなくなった。 「試合中に体調が悪くなったが、自分が頑張らないと、という責任感が強く『休ませてほしい』と言い出せなかった。スポーツによる熱中症が起こりやすい典型的な状況で、無理することで重症化しやすくなります」(三宅教授)

【非労作性熱中症】78歳女性・老老介護中: 脳梗塞で寝たきりになっている81歳の夫を一人で介護していた。本人のパーキンソン病も進行していた。エアコンは嫌いなので使わない。梅雨明けで暑さの続く7月下旬、夕飯の準備をしているときに倒れる。数日後、連絡が取れず心配して訪ねてきた娘が発見。室内はサウナのような状態で、夫婦ともに熱中症になっていた。

 「老老介護の場合、介護しているほうが熱中症で倒れると、介護されているほうも熱中症になってしまう。特に梅雨明けの7月下旬は一気に熱波が来るにもかかわらずまだ体が暑さに慣れておらず、最も熱中症を起こしやすい時期です」(三宅教授)

■応急措置は「FIRE」(炎)と覚える

 日本救急医学会では熱中症を重症度でI度、II度、III度に分類している。I度は意識障害がなく、応急措置と見守りで済むレベル。II度は集中力や判断力の低下が見られ、医療機関の受診が必要なレベル。III度は特に症状が重く、入院が必要なレベルだ。 「一般の人はI度とII度を見分ける知識が求められる。ポイントは意識の有無と、自力で水を飲めるかどうか。ペットボトルなどを容器ごと手渡して、一人で水を飲めるかを確認してください。うまく飲めなければ意識障害があるII度ということ。すぐに医療機関に連れていきましょう」と三宅教授。

 応急措置については、「FIRE」というキーワードを覚えておこう。F(Fluid)は水分補給、I(Icing)は冷却、R(Rest)は安静、E(Emergency)は119番通報だ。「意識がもうろうとしていたら、すぐに救急車を。その場合は逆から、つまりE、R、I、Fの順番で応急処置をしてください。意識がない場合、無理に水を飲ませてはいけません」と三宅教授はアドバイスする。なお、環境省では熱中症の基本情報、予防法、応急措置などをまとめた「熱中症環境保健マニュアル2014」を出している。環境省のホームページから無料でダウンロードできる()ので、ぜひ目を通していただきたい。

三宅康史さん 帝京大学医学部救急医学講座教授。帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長。1985年、東京医科歯科大学医学部卒業。さいたま赤十字病院救命救急センター長、昭和大学医学部教授などを経て、2016年より現職。日本救急医学会評議員。熱中症環境保健マニュアル編集委員。

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