【日本の病院の実力】虎の門病院脳神経外科 患者への適正治療判断 診療科の垣根越え連携
突然死に繋がる、くも膜下出血では、およそ8割は、血管にコブが生じる脳動脈瘤(りゅう)の破裂が原因といわれる。
近年、画像診断の発展により、小さな未破裂脳動脈瘤が見つかるケースも増えた。しかし、未破裂脳動脈瘤を持つ人の全てが、くも膜下出血になるわけではない。
治療の可否に加え、治療法にも、細い管のカテーテルによる脳動脈瘤コイル塞栓(そくせん)術か、頭を開いてコブをクリップで止める開頭クリッピング術かなど、選択肢がある。
そんな脳動脈瘤をはじめとする「血管障害」に対し、脳神経血管内治療部とタッグを組み、成果を上げているのが虎の門病院脳神経外科。脳卒中センターの一翼も担い、神経内科とも連携しながら、脳卒中などの救急救命治療にも力を入れている。
「救急も、日々の診療も、専門医の総合力を生かせるのが強みです。未破裂脳動脈瘤の治療では、患者さんは無症状のことが多い。
治療によって合併症を起こさないようにするのが、私たちの務め。自分の得意とする治療を患者さんに勧めるのではなく、客観的に見て、どの治療が適正かをチーム医療によって判断できます。その上で、得意分野の力が発揮できるため、スタッフのモチベーションも高い」
こう話す同科の原貴行部長(44)は、脳神経外科治療のエキスパート。開頭クリッピング術や血管バイパス術、さらに、動脈硬化で首の頚(けい)動脈が狭まった状態を解消する頚動脈内膜剥離(はくり)術も得意としている。
頚動脈が動脈硬化で狭まると、血栓が生じて脳梗塞に直結するため、無症状の段階での治療は予防効果が高い。ただし、手術だけでなくカテーテルによる治療法もある。手術か、カテーテル治療か、その選択も、チームワークが生かされる。
「患者さんの全身状態が、カテーテル治療でのリスクが高いこともあれば、手術のための全身麻酔によるダメージが大きいこともある。だからこそ、チーム力は不可欠。
診療科の垣根を越えた連携によって、患者さんにベストな治療を選択することができるのです」
一方で、原部長は難症例の脳動脈瘤や脳腫瘍にも立ち向かう。母校の東大研修医時代から、技術に磨きをかけてきた。2010年、虎の門病院に着任してからも、その姿勢に変わりはない。脳神経のダメージを極力低減すべく、
神経の状態をモニタリングしながら行う手術も、ハイレベルな腕を持つ検査技師の協力を得て、さらなる技術向上を実現している。
「他院で手術が無理といわれた症例も、基本的には断らないのがポリシー。絶対に引きません。前進あるのみ。スタッフのモチベーションが高いので、技術の継承にも力を入れているところです」と原部長。
チームワークと技術レベルの向上で、難症例の克服にも挑み続けている。
<データ>2013年実績
・手術総数298件
・開頭腫瘍摘出術63件
・開頭クリッピング術51件
・頚動脈内膜剥離術36件
・病院病床数889床
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