【日本の病院の実力】日本医科大学付属病院・心臓血管外科 心房細動を合併した弁膜症の難しい同時治療で全国トップ級
心臓にある弁の働きが障害される心臓弁膜症の治療で、手術を受ける人は国内で年間約2万人。
手術適応の弁膜症の人のおよそ半数は、心房が小刻みに震える心房細動を併発し、脳梗塞などの危険性も高い。弁膜症の手術の際に、心房細動の治療も行うと長期的な予後が良くなる。
しかし、同時に2つの治療を行うのは難しい。心房細動の確実な治療が容易ではないからだ。そんな心房細動を合併した弁膜症の治療で、全国トップクラスの実力を誇るのが、日本医科大学付属病院心臓血管外科。
冠動脈バイパス術などの一般的な心臓大血管手術を数多く行う一方で、心房細動や心室頻拍(ひんぱく)など不整脈の外科治療では、世界的にも名を馳(は)せる。
「弁膜症の代表的な僧帽弁膜症(そうぼうべんまくしょう)では、約8割の人が心房細動を合併しています。弁膜症の治療だけでは心房細動を治すことはできません。どちらも同時に治すことが大切なのです」
こう話す同科の新田隆主任教授(59)は、約20年前に心房細動のラディアル手術を開発した。
心房細動に対する手術として、最初に開発されたメイズ手術は、心房の動きが悪くなる欠点があり、それを改良したのがラディアル手術だ。心房細動の電気信号の乱れを外科的な手技で解消する。
ただし、新田教授は、より身体への負担の少ない方法を約10年前に日本に導入した。高周波アブレーションという医療機器による治療である。
「高周波アブレーションは、心房を切開縫合する代わりに、心房をはさんで高周波で細胞の一部を壊死(えし)させるだけなので、安全かつ容易に治療が行えます。
ただし、切開縫合では、乱れた電気を確実にブロックできますが、高周波アブレーションでは、その効果が不完全になりやすい。手術中に伝導ブロックの確認を行うことで、成功率を上げています」(新田教授)
国内では、心房細動の患者は約80万人と推計されている。弁膜症を合併していない人では、手術ではなく、薬物療法やカテーテル治療が行われるケースが多い。
カテーテル治療は、血管の中に細い管を入れ、心房の内側から先端についた電極による高周波で、組織を焼いて伝導をブロックする方法。しかし、カテーテル治療だけでは治らないケースもある。
「欧州では、心房の内側からのカテーテル治療と、外側からの高周波アブレーションを組み合わせたハイブリッド治療が行われています。当院でも、近々導入する予定です」
治療は充実しているが、新田教授によれば、心房細動の乱れた電気信号については、まだ解明されていないことが多いそうだ。多様性を持つ症状を確実に封じ込めるには、総合力が不可欠となる。
「100年以上も前から心房細動は研究されていますが、心房細動の仕組みは完全にわかっているわけでありません。取り組むべきことは、まだたくさんあります」と新田教授。新たな扉を開けるために奮闘中だ。
【データ】2013年実績
・手術総数約500件
・弁膜症手術約100件
・心房細動手術延べ500例
・病院病床数899床
〔住所〕〒113-8603東京都文京区千駄木1の1の5
電話/03・3822・2131
手術適応の弁膜症の人のおよそ半数は、心房が小刻みに震える心房細動を併発し、脳梗塞などの危険性も高い。弁膜症の手術の際に、心房細動の治療も行うと長期的な予後が良くなる。
しかし、同時に2つの治療を行うのは難しい。心房細動の確実な治療が容易ではないからだ。そんな心房細動を合併した弁膜症の治療で、全国トップクラスの実力を誇るのが、日本医科大学付属病院心臓血管外科。
冠動脈バイパス術などの一般的な心臓大血管手術を数多く行う一方で、心房細動や心室頻拍(ひんぱく)など不整脈の外科治療では、世界的にも名を馳(は)せる。
「弁膜症の代表的な僧帽弁膜症(そうぼうべんまくしょう)では、約8割の人が心房細動を合併しています。弁膜症の治療だけでは心房細動を治すことはできません。どちらも同時に治すことが大切なのです」
こう話す同科の新田隆主任教授(59)は、約20年前に心房細動のラディアル手術を開発した。
心房細動に対する手術として、最初に開発されたメイズ手術は、心房の動きが悪くなる欠点があり、それを改良したのがラディアル手術だ。心房細動の電気信号の乱れを外科的な手技で解消する。
ただし、新田教授は、より身体への負担の少ない方法を約10年前に日本に導入した。高周波アブレーションという医療機器による治療である。
「高周波アブレーションは、心房を切開縫合する代わりに、心房をはさんで高周波で細胞の一部を壊死(えし)させるだけなので、安全かつ容易に治療が行えます。
ただし、切開縫合では、乱れた電気を確実にブロックできますが、高周波アブレーションでは、その効果が不完全になりやすい。手術中に伝導ブロックの確認を行うことで、成功率を上げています」(新田教授)
国内では、心房細動の患者は約80万人と推計されている。弁膜症を合併していない人では、手術ではなく、薬物療法やカテーテル治療が行われるケースが多い。
カテーテル治療は、血管の中に細い管を入れ、心房の内側から先端についた電極による高周波で、組織を焼いて伝導をブロックする方法。しかし、カテーテル治療だけでは治らないケースもある。
「欧州では、心房の内側からのカテーテル治療と、外側からの高周波アブレーションを組み合わせたハイブリッド治療が行われています。当院でも、近々導入する予定です」
治療は充実しているが、新田教授によれば、心房細動の乱れた電気信号については、まだ解明されていないことが多いそうだ。多様性を持つ症状を確実に封じ込めるには、総合力が不可欠となる。
「100年以上も前から心房細動は研究されていますが、心房細動の仕組みは完全にわかっているわけでありません。取り組むべきことは、まだたくさんあります」と新田教授。新たな扉を開けるために奮闘中だ。
【データ】2013年実績
・手術総数約500件
・弁膜症手術約100件
・心房細動手術延べ500例
・病院病床数899床
〔住所〕〒113-8603東京都文京区千駄木1の1の5
電話/03・3822・2131