あなたの健康はお金で買えますか・・・? 2型糖尿病でも「糖質」を食べたければ~「食べ順」の食事療法でダイエット
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2型糖尿病でも「糖質」を食べたければ~「食べ順」の食事療法でダイエット

2型糖尿病の人のほとんどは、食生活の習慣が、その原因だと考えられます。三度三度の食事で総カロリーの60%かそれ以上の糖質を食べて、そのたびに「食後高血糖」になってインスリンが追加分泌される。それが繰り返されて――

①膵臓が疲弊してインスリン分泌がうまくいかなくなる
②インスリンの追加分泌で体脂肪が増えてインスリン抵抗性が上がってくる
③度重なる高血糖で血管内皮細胞が傷んでくる

 などの積み重ねで糖尿病になってしまうわけです。つまり、度重なる食後高血糖と追加分泌インスリンのせいで2型糖尿病になるのです。

 それを避ける手っ取り早い方法として、食後高血糖にならず追加分泌インスリンの少ない「糖質制限食」をお奨めしてきました。アメリカ糖尿病学会では、2013年から正式に認められた糖尿病の食事療法です。

 ......ですが、できない人もけっこう多いんですよね。始めてはみたものの続けられない。そういう人はどうすればいいのでしょうか? 実は簡単な方法があります。

「野菜」「おかず」「主食」の順番で食べると食後高血糖が抑えられる

 食後高血糖は、実は食べる順番を意識するだけでかなり抑えられます。

 まず「野菜」を食べて、それからたんぱく質や脂質中心の「おかず」を食べて、そして最後にご飯や麺などの「炭水化物」を食べる。そうするだけでかなりの効果があるのです。

 それはなぜか? 最初に「野菜」を食べることで消化器の中に食物繊維が入ります、そこに「炭水化物」が入ると、その吸収が抑えられて、血糖値上昇が緩やかになります。また「野菜」の次に、たんぱく質や脂質を中心とした肉や魚などの「おかず」を食べると、今度は消化管の動きがゆっくりになります。これはたんぱく質や脂質の消化・吸収には時間がかかるために自然に起こる反応です(食物繊維にも消化管の動きをゆっくりにする効果があります。)。

 これとは逆に「ご飯」から食べてしまうと、血糖値は一気に上がり、見事な食後高血糖カーブを描いてしまいます。この現象については大阪府立大学の今井佐恵子教授が2012年に論文発表されていますし、日本語での説明もあります。

○参考1:「最初に野菜」の食習慣で1日の血糖値の変動を抑制(https://www.osakafu-u.ac.jp/news/publicity-release/nws20120710/)
○参考2:野菜から食べて生活習慣病予防(http://www.nyusankin.or.jp/health/pdf/Nyusankin_482_b.pdf)

 「参考2」の資料はとてもわかりやすく書かれているのでよく読んでみてください。緑色のグラフが野菜から食べる血糖値の上がらない食べ方、赤のグラフがご飯から食べる血糖値が爆上がりする食べ方です。

三角食べは成長期の子供向けの食べ方

 「食べ順」による食後高血糖の予防について、糖尿病の患者さんに説明すると、次のように言われます。

 「主食とおかずと汁ものや牛乳を、順繰りにあるいは交互に食べるのが体にいいと小学校の給食で習いました。それからずっとそれでやってるんですが、先生はあの食べ方を否定されるんですか? 学校の先生や栄養士さんから指導されたのに」

 ......はい、否定します。「大人」で「糖尿病」のあなたには、三角食べは向いていません。三角食べというのは、成長期の子供が偏食して栄養バランスを崩さないように考えだされた食べ方です。

 あのようにいろんな食材をちょっとずつ食べる食べ方をしておけば、少食の子供が途中で給食を残しても、いろんな食材を食べることができますよね。成長期の子供の偏食の弊害を避けるための食べ方なのです。大人で2型糖尿病やその予備群のあなたが、わざわざする必要はありません。

 実は三角食べで血糖値がどのように変化するのかについても、今井佐恵子教授は検討されています。上に紹介した「参考2」の「図3」の青い線の一部が「三角食べ」ですが、ご飯から食べるよりはましなものの、食後高血糖になることは免れようがありません。生活習慣病の大人は、三角食べは避けてください。

おかずは魚がいいのか、肉がいいのか?

 さて、食べる順番はわかったとして、順番さえ守ればおかずは何でもいいのでしょうか? これについては関西電力医学研究所の矢部大介医師たちが面白い研究を発表されています。

○参考3:糖尿病ネットワーク(2016年01月08日)「食べる順番」ダイエットで食後高血糖を防止 米より前に野菜・魚・肉(http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/024617.php)

 矢部先生たちは「①ご飯を食べて魚を食べる」「②魚を食べてご飯を食べる」「③肉を食べてご飯を食べる」という3つの食べ方で、食後血糖値の変化や、インクレチンというインスリンを分泌するホルモンの発現変化を、2型糖尿病の患者さんと健康な人とで研究されています。

 結果は、ご飯から先に食べると食後高血糖になるけれども、ご飯の前に魚あるいは肉を食べると、どちらでも高血糖がある程度抑えられるというものでした。野菜を食べなくても、肉あるいは魚料理を先に食べてから糖質を食べれば食後高血糖がある程度抑えられるのです。

 わずかですが、肉をご飯より先に食べた方が魚をご飯より先に食べるよりも血糖値の上昇を抑える効果は高くなりました。しかしまた同時に、脂肪を蓄積しやすくなるインクレチン(GIP)の分泌も亢進するので、矢部先生たちは肉を食べることは肥満につながるのではないかと考察されています。

 以上のことからも、「野菜」だけでなく「おかず」を先に食べてから「糖質(主食)」を、という食べ順に食後高血糖を抑える効果が高いことがよくわかります。

糖質制限ダイエットと食べ順ダイエット、どちらがいいか?

 さて、ここまで書いてくると「え? じゃあ、糖質制限しなくても食べ順を守るだけで2型糖尿病の食事は大丈夫なの?」という疑問がわいてくると思います。

 結論から言うと、まったく同じ程度の効果は期待できません。

 実践、継続できる人には糖質制限をお勧めします。糖尿病が改善するスピードも速いです。でも、「私はどうしてもご飯を食べたいんです!」「パンを食べない人生なんて考えられません!」「スイーツのない人生なんてクリープのないコーヒーみたいなもの!」という方々には、食べ順ダイエットをお勧めしておきます。

 糖質制限だけが食事療法の唯一の選択肢ではありません。ともかく、最初から薬で病気を治すことを考えるのではなくて、食事を改善して病気を治すこと、そこにみなさんもっと注目してください。

連載「肥満解読~痩せられないループから抜け出す正しい方法」バックナンバ

吉田尚弘(よしだ・ひさひろ)

大阪市内のクリニック勤務。1987年 産業医科大学卒業、熊本大学産婦人科に入局、産婦人科専門医取得後、基礎医学研究に転身。京都大学医学研究科助手、岐阜大学医学研究科助教授後、2004年より理化学研究所RCAIチームリーダーとして疾患モデルマウスの開発と解析に取り組む。その成果としての<アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子の解明>は有名。
その傍らで2012年より生活習慣病と糖質制限について興味を持ち、実践記をブログ「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」を公開、ドクターカルピンチョの名前で知られる。2016年4月より内科臨床医。


吉田尚弘(よしだ・ひさひろ)
大阪市内のクリニック勤務。1987年 産業医科大学卒業、熊本大学産婦人科に入局、産婦人科専門医取得後、基礎医学研究に転身。京都大学医学研究科助手、岐阜大学医学研究科助教授後、2004年より理化学研究所RCAIチームリーダーとして疾患モデルマウスの開発と解析に取り組む。その成果としての<アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子の解明>は有名。その傍らで2012年より生活習慣病と糖質制限について興味を持ち、実践記をブログ「低糖質ダイエットは危険なのか?中年おやじドクターの実践検証結果報告」を公開、ドクターカルピンチョの名前で知られる。2016年4月より内科臨床医。
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