【日本の病院の実力】国立がん研究センター中央病院 創薬推進や新たな治療法 肝胆膵がん研究の最前線
国内のがん死因では、第4位が膵(すい)がん、第5位が肝がん、第6位が胆道がんで、いずれも治療は難しいといわれる。
肝がんは、原因となるB型・C型ウイルス性肝炎の治療法が進歩し、亡くなる人は減ってきてはいるが、ウイルス性肝炎とは無関係の肝がんは増加傾向。膵がんや胆道がんは、そもそも早期発見の診断技術が確立されておらず、効果的な薬も乏しい。
この苦境を改善すべく、創薬の推進などで国内外を牽引(けんいん)しているのが、国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科。
膵がんについては、4つの抗がん剤を合わせた「FOLFIRINOX療法」が、日本人にも有効なことを他施設とともに明らかにし、昨年12月の承認への道筋をつけた。もうひとつ、効果を検証した新しい治療法も、近々承認される見込みだ。
さらに、胆道がんでは、世界初のがんを狙い撃ちにする分子標的薬の開発のため、今年3月に臨床研究をスタートしている。
「肝・胆・膵の3つのがんには、たくさんの課題があります。それを克服するために、数多くの研究を行っています。
中でも、胆道がんは、欧米人の罹患(りかん)率が人口比で少なく、日本人は多い傾向にあるため、日本で薬を開発することが重要だと思っています」
こう話す同科の奥坂拓志科長(52)は、肝胆膵がんの化学療法のスペシャリストであり、長年、新薬開発にも力を注いでいる。一般的に、肺がんや大腸がん、乳がんなどには、たくさんの新しい薬が登場しているが、肝胆膵領域のがんについては極端に数が少ない。
肝胆膵がんの増殖メカニズムが複雑で未知な部分も多く、既存の分子標的薬は、肝胆膵領域のがんには効果がほとんどないからだ。
さらに、胆道がんは日本には患者が多いにも関わらず、世界的に患者数が少ないゆえに、積極的に新薬開発に力を注ぐ製薬会社が少ないことも原因となっている。しかし、肝胆膵領域のがんに苦しむ患者はいる。
奥坂科長は、基礎研究の後押しや製薬会社への働きかけなどを行いつつ、国内外の医師などと協力し、さまざまな研究を進めている。
「患者さんの予後を改善するために、さまざまな努力をしています。
新薬だけでなく、がんを熱で焼き切るラジオ波焼灼(しょうしゃく)術や、がんに栄養を運ぶ肝動脈をふさぐ肝動脈塞栓(そくせん)術など、放射線科や外科とも密接に連携しながら、たくさんの専門スタッフで対応しています。治療が難しいといっても、光がないわけではありません」
肝胆膵領域のがんでは、従来、患者が得られる情報も少なかった。
そこで奥坂科長は、7年前に病院内に患者向け教室を開設した。すると、全国の施設にも教室設立の動きが広がり、現在はこれらの施設の医療者とともに、専門家向けに年1回「がん患者教室ワークショップ」も開催している。
「多くの方に病気や治療法について知っていただきたい。それが、患者さんのより良い予後を後押しできると思っています」と奥坂科長。山積の課題を一つずつ崩すべく、邁進(まいしん)中だ。
〈データ〉2013年実績(初診患者数)
・肝細胞がん184人
・膵がん431人・胆道がん118人
・病院病床数600床
〔住所〕〒104-0045 東京都中央区築地5の1の1
(電)03・3542・2511
肝がんは、原因となるB型・C型ウイルス性肝炎の治療法が進歩し、亡くなる人は減ってきてはいるが、ウイルス性肝炎とは無関係の肝がんは増加傾向。膵がんや胆道がんは、そもそも早期発見の診断技術が確立されておらず、効果的な薬も乏しい。
この苦境を改善すべく、創薬の推進などで国内外を牽引(けんいん)しているのが、国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科。
膵がんについては、4つの抗がん剤を合わせた「FOLFIRINOX療法」が、日本人にも有効なことを他施設とともに明らかにし、昨年12月の承認への道筋をつけた。もうひとつ、効果を検証した新しい治療法も、近々承認される見込みだ。
さらに、胆道がんでは、世界初のがんを狙い撃ちにする分子標的薬の開発のため、今年3月に臨床研究をスタートしている。
「肝・胆・膵の3つのがんには、たくさんの課題があります。それを克服するために、数多くの研究を行っています。
中でも、胆道がんは、欧米人の罹患(りかん)率が人口比で少なく、日本人は多い傾向にあるため、日本で薬を開発することが重要だと思っています」
こう話す同科の奥坂拓志科長(52)は、肝胆膵がんの化学療法のスペシャリストであり、長年、新薬開発にも力を注いでいる。一般的に、肺がんや大腸がん、乳がんなどには、たくさんの新しい薬が登場しているが、肝胆膵領域のがんについては極端に数が少ない。
肝胆膵がんの増殖メカニズムが複雑で未知な部分も多く、既存の分子標的薬は、肝胆膵領域のがんには効果がほとんどないからだ。
さらに、胆道がんは日本には患者が多いにも関わらず、世界的に患者数が少ないゆえに、積極的に新薬開発に力を注ぐ製薬会社が少ないことも原因となっている。しかし、肝胆膵領域のがんに苦しむ患者はいる。
奥坂科長は、基礎研究の後押しや製薬会社への働きかけなどを行いつつ、国内外の医師などと協力し、さまざまな研究を進めている。
「患者さんの予後を改善するために、さまざまな努力をしています。
新薬だけでなく、がんを熱で焼き切るラジオ波焼灼(しょうしゃく)術や、がんに栄養を運ぶ肝動脈をふさぐ肝動脈塞栓(そくせん)術など、放射線科や外科とも密接に連携しながら、たくさんの専門スタッフで対応しています。治療が難しいといっても、光がないわけではありません」
肝胆膵領域のがんでは、従来、患者が得られる情報も少なかった。
そこで奥坂科長は、7年前に病院内に患者向け教室を開設した。すると、全国の施設にも教室設立の動きが広がり、現在はこれらの施設の医療者とともに、専門家向けに年1回「がん患者教室ワークショップ」も開催している。
「多くの方に病気や治療法について知っていただきたい。それが、患者さんのより良い予後を後押しできると思っています」と奥坂科長。山積の課題を一つずつ崩すべく、邁進(まいしん)中だ。
〈データ〉2013年実績(初診患者数)
・肝細胞がん184人
・膵がん431人・胆道がん118人
・病院病床数600床
〔住所〕〒104-0045 東京都中央区築地5の1の1
(電)03・3542・2511