お互いがそれぞれの疾患に影響する可能性が高いといわれている「うつ」と「アルコール依存」。
アルコールの摂取は「うつ」を悪化させることが指摘されていますが、アルコール依存症が原因で「うつ」を発症してしまうケースや、その逆に「うつ病」が原因でアルコールにのめりこんでしまうケースも多くみられるようです。
また、2013年に自殺をしたアメリカの人気俳優ロビン・ウィリアムズさんも、長年のあいだアルコール依存症と重度のうつ病に苦しんでいたことが知られています。
このシリーズでは、実話をもとに「うつ」と「アルコール依存」、そしてそれらが原因で家庭内に起こるケースも多いDVやモラハラ、共依存といった問題について掘り下げていきます。
◆お酒を買うときだけ外に出られる
アルコールの問題による欠勤が続いたSさん(仮名・31歳)は、ついに5年間勤めた会社を退職してしまいました。
Sさんが会社に行けなくなったのは、連日の深酒による二日酔いのせいばかりではなく、「会社に行こうと思うとどうしてもベッドから起きられない」など、「うつ」のような心身の状態の影響もありました。
会社を辞めたSさんは以前にも増して家に閉じこもりがちになり、雇用保険の手続きでハローワークに出かける以外ほとんど外出することもなく、家族以外の人と接することもありません。
しかし、Sさんは毎晩の深酒だけはどうしてもやめることができませんでした。
朝からお酒を飲むようなことはないものの、夕食時の晩酌にはじまり、その後も泥酔するまで焼酎やワインを飲みつづけます。この時期、Sさんが自発的に外出するのは、近所の酒店やコンビニにお酒を買いにいくときだけでした。
◆「イネーブリング」の問題
さらに、Sさんの妻の行動に、共依存に多いといわれる「イネーブリング」が目立つようになりました。
イネーブリングとは、「世話を焼くことでかえって相手の依存症を悪化させる行為」のことですが、Sさんの妻は「Sさんの酒癖で困っている」にもかかわらず、Sさんのためにお酒を買っておいたり、Sさんが落ちこんでいるときに晩酌を勧めたりといった行動をしてしまうのでした。
その結果、泥酔したSさんは妻に暴言を吐いたり、物を投げたりするようなトラブルを起こすのですが、ごくまれにSさんが以前のように上機嫌で酔っぱらう日もありました。
また、泥酔したSさんはそのうちにイビキをかいて眠ってしまうのがいつものコースです。
こうした経験から、Sさんの妻は「お酒を飲めば上機嫌になるかも」「早くお酒を飲んで眠ってほしい」という思いもあって、Sさんにお酒を勧めてしまうのでした。
◆それでも「依存症ではない」と思っている
自分の意志では毎日の深酒がやめられず、酔うと暴言や暴力といったトラブルを頻繁に起こすようになったSさんでしたが、このときはまだ、自分が「うつ」や「アルコール依存」であるとは夢にも思っていませんでした。
なぜなら、「うつ」のような症状は会社を辞めたことでいったんは落ちついていましたし、気分がふさぎこんでいたとしても、お酒を飲むことでまぎらわすことができると思っていたからです。
また、アルコール依存に関しても、朝からお酒を飲んでいるわけではなく、Sさん自身は「お酒はいつでもやめられる」と考えているようでした。
しかし、こうした「自分でコントロールできる」という過信が「うつ」やアルコール依存に対する気づきを遅らせることになり、Sさんは症状をますます悪化させることになってしまうのでした。
(次回に続く)
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