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命を縮める「睡眠負債」 そのチェック法とは?


ドラえもんの秘密道具に「睡眠圧縮剤」というのがあった。服用して1時間眠れば、その人のカラダは10時間分の睡眠をとったことになるという魔法の薬。1日24時間のうち、1時間だけ寝れば、残る23時間に活動できるわけだ。

 本当にそんな薬があったらいいなあ……そう願ってしまうほど、現役世代は忙しい。仕事をリタイアした人の多くも不眠に悩む。成長期の子どもは、塾やスマホで夜更かしばかりしている。

「7時間前後の質のよい睡眠をとっていれば、健康被害は最も少なくなります」

 睡眠評価研究機構代表で医学博士の白川修一郎さんは、そう指摘する。

 でも、日本人の多くは7時間も寝ていない。厚生労働省が20歳以上の男女を対象に調べたところ、7時間に満たない人が全体の7割を超えた(2015年)。このうち「5時間未満」の人が8.4%、「5時間以上6時間未満」の人が31.1%を占めた。しかも、睡眠時間は年々減少傾向だ。

 いや、私は6時間寝れば大丈夫です──そうおっしゃる人もいるだろう。だが、ここでは「個人差はあるが、7時間は必要」という白川説で話を進める。

 7時間を前提とすれば、6時間しか寝ない人には、毎日1時間の寝不足が生じる。これを1カ月続ければ30時間、1年続ければ360時間の寝不足が蓄積される計算になる。みんな毎日一定の睡眠時間を必要としており、それより短ければ足りない分が徐々にたまって睡眠負債となるのだ。

 5時間や6時間の睡眠でも十分だと思っていても、実際には負債を抱えている場合がある。下の「睡眠負債のチェック項目」で確認しよう。一つでも当てはまる人は睡眠負債があると考えたほうがいい。

【睡眠負債のチェック項目】(一つでも当てはまれば要注意)
□ 朝起きる時刻になかなか起きることができない
□ 休日は平日よりも2時間以上長く眠らないと体が持たない
□ 平日の午前中に眠くてたまらないことがしばしばある
□ 夕食後にうたた寝をしてしまうことがしばしばある
※白川修一郎・睡眠評価研究機構代表への取材を基に作成

 睡眠負債は自覚症状のないまま蓄積されていく。その結果、仕事や勉強が思うようにはかどらなくなる。白川さんが一部を監修した『睡眠負債 “ちょっと寝不足”が命を縮める』(朝日新書)で紹介された例を挙げよう。

 米国の大学が被験者48人の睡眠を「徹夜」「4時間」「6時間」「8時間」に分け、2週間にわたって脳の反応テストをした(徹夜は3日間で睡眠時間ゼロ)。言うまでもなく、4時間以下の被験者の脳の働きは衰えを見せた。6時間の人も時間がたつにつれ、徹夜した人と同じくらいまでテスト結果が低下したが、被験者はさほど眠気を感じず、注意力の低下にもほとんど気づかなかったという。

 睡眠負債は活動を鈍らせるばかりか、健康面でも認知症や生活習慣病、がんなどに影響するという。

 深刻なのが認知症のリスクだ。脳にたまった老廃物は睡眠中に排泄(はいせつ)されるが、寝不足が続くと脳内に残ってしまう。その一つが「アミロイドβ」という老廃物で、アルツハイマー型認知症の病因と考えられている。

「アルツハイマー型認知症患者の15%は睡眠の問題に起因するとの報告もある。アミロイドβは認知症を発症する20~30年前から蓄積してくるので、働き盛りの40代から睡眠負債の蓄積に注意するべきです」(白川さん)

 フィンランドで2千人を対象に睡眠時間と認知症の関連性を調べたところ、睡眠時間が7~8時間の人に比べ、7時間未満の人は発症リスクが1.59倍高くなったという。

 がんとの関連性も疑われている。睡眠を妨害されたマウスと、そうでないマウスを比較した米国の研究では、前者のがん細胞が2倍以上の重さになった。睡眠が不足すると免疫力が下がり、がん細胞の攻撃性が高まる恐れがあるという。

 早稲田大学の柴田重信教授(時間栄養学)によれば、「夜勤の人にがんの発症リスクが高くなる」という疫学研究の結果がある。

「明暗環境が変わる交代制勤務の人は、乳がんや前立腺がん、大腸がんの罹患(りかん)率が高い。海外の研究で、夜勤を含む交代制勤務を4年以上やった人は、乳がんの発症率が1.95倍になったという結果がある。夜中に光を浴びていると、がんを抑制するメラトニンの分泌量が抑えられるからだと考えられている」(柴田教授)

 井上雄一・東京医科大学教授(睡眠学)は、寝不足のせいで高血圧や糖尿病を発症し、悪化させることもあると指摘する。

「メタボリックシンドロームになる人も多い。寝ていないと食欲を促進するグレリンというホルモンの分泌が増え、食欲にブレーキをかけるレプチンという物質の分泌が減る。食欲が高まり、肥満になるという研究報告もあるんです」

 その負のスパイラルに陥ると、肥満が睡眠時無呼吸症候群を招き、睡眠の質を下げる。そうなると、高血圧や心臓病になりかねない。医師の診察を受け、毎晩、特殊なマスクを装着し、就寝中に呼吸が止まるのを防ぐ必要に迫られる。

 そのほか、不眠症やうつ病になる可能性もある。

「睡眠時間の確保は、病気の予防と治療、健康保持のための必須事項だと考えてください」(井上教授)

 長年ため込んできた睡眠負債を返済することはできるのか。

 毎日長時間寝れば負債が減るというわけではなさそうだ。白川さんは、就寝時刻と起床時刻を記録する「睡眠日誌」を勧める。どれだけ寝たのかを記録し、自分の体調が良いと実感できる時間を把握する。その時間を毎日確保する努力をすれば、負債を無理なく返済できるそうだ。

 白川さんが言う。

「睡眠日誌で、7時間前後眠れているかを確認します。途中で起きていないかもチェックしましょう。慣れてきたら『返済週間』を設けてください。『返済週間』はいつもより30分早く就寝し、いつもどおりの時刻に起床して、寝起きや日中の調子の具合を確かめてみましょう。そこからさらに30分早く寝る習慣をつければ、計1時間を返済できます」

 布団に入っても寝付きの悪い人もいる。白川さんが提唱する「すみやかに寝るための10カ条」(下)を参考にしよう。

【すみやかに寝るための10カ条】
1、午前中に日の光を浴びよ
2、食事の時間は一定にせよ
3、運動は夕方に。散歩もよし
4、カフェインは寝る3時間前まで
5、酒は寝る3時間前まで
6、寝る2時間前より強い光を避けよ
7、風呂は寝る30分前に
8、寝室は18~26度に保つべし
9、布団でのスマホ・ゲームは御法度
10、寝なきゃとあせるべからず

※監修/白川修一郎・睡眠評価研究機構代表

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