【追跡!医療新発見】糖尿病に潜む睡眠障害 2型患者の生活習慣病も悪化させる
2型糖尿病で血糖値が上がると、睡眠の質が低下し、さらに生活習慣病を悪化させることを大阪市立大学医学研究科代謝内分泌病態内科学の稲葉雅章教授らのグループが突き止めた。
従来睡眠時間の短さと糖尿病との関連性は、疫学調査結果などで示されていたが、脳波計を用いて科学的に解明されたのは初めてのこと。糖尿病の改善には、睡眠の質の改善も不可欠となりそうだ。
【メタボ悪化と相関】
人は眠りにつくと、直後の90分~120分間に脳を休ませる深い眠り【徐波(じょは)睡眠】に入り、それに続いて浅い眠りのレム睡眠が現れる。
稲葉教授らの研究では、血糖値の高い2型糖尿病の人ほど、この深い眠りが減少し、レム睡眠が出現するまでの時間も短くなり、睡眠の質が低下していた。
結果として交感神経が優位になり、血糖値だけでなく夜間から明け方の血圧を上昇させ、血管障害も進行させるそうだ。
「2型糖尿病患者に、睡眠改善薬を投与すると、睡眠指標の改善とともに、早朝高血圧や高血糖の低下が見られる症例があります。交感神経の緊張の減弱も同時に見られ、この機序が重要だと考えています。
まだ患者数が少ないので、これから積み上げていかなければなりません」
こう話す稲葉教授によれば、2型糖尿病の40%に睡眠障害が見られ、正常の人の2倍程度も悪化。
さらに、すでに足のしびれや血糖不良による夜間頻尿などの自覚症状を持つ人は、睡眠障害の率が上昇。重度の睡眠時無呼吸症候群を併発している人も5%もいた。
「睡眠障害は、生活習慣病を構成する重要な病気のひとつであり、メタボリック症候群とは、双方向に増悪させる関係になっています。
そのため、生活習慣病を持つ人全員に睡眠障害を疑い、その有無を検討すべきだと思っています」(稲葉教授)
【睡眠障害改善薬を上手に利用する】
単に糖尿病で睡眠の質が落ちるだけでなく、睡眠障害を併発することで、メタボリック症候群の後押しをしてしまう。
それこそが、稲葉教授らが行っている研究のポイント。従来、血糖降下薬や抗圧薬を服用しても、コントロールがうまくいかない人の中には、睡眠障害が関与している可能性もある。
「将来的には、糖尿病などの生活習慣病の改善薬と同時に、睡眠障害改善薬を処方することで、コントロールがうまくいくようになることをイメージしています。
睡眠障害改善薬は、メラトニン受容体刺激薬やオレキシン阻害薬の登場で、これまでの習慣性や依存性のある薬剤とは異なる薬があります。それらをうまく利用することを考えています」
稲葉教授は、現在、2型糖尿病患者の睡眠障害を改善したときのデータを集め、臨床的なエビデンス(科学的根拠)にすべく、力を注いでいる。
「睡眠障害は無自覚であったり、昼間の眠気が強くても、一般医家や一般の方々に病気としては考えられていないのが問題です。一般医家でも睡眠障害をきちんと治療する。その認識を高めていく必要があると思っています」と稲葉教授。改善する方法を構築するために奮闘中だ。
従来睡眠時間の短さと糖尿病との関連性は、疫学調査結果などで示されていたが、脳波計を用いて科学的に解明されたのは初めてのこと。糖尿病の改善には、睡眠の質の改善も不可欠となりそうだ。
【メタボ悪化と相関】
人は眠りにつくと、直後の90分~120分間に脳を休ませる深い眠り【徐波(じょは)睡眠】に入り、それに続いて浅い眠りのレム睡眠が現れる。
稲葉教授らの研究では、血糖値の高い2型糖尿病の人ほど、この深い眠りが減少し、レム睡眠が出現するまでの時間も短くなり、睡眠の質が低下していた。
結果として交感神経が優位になり、血糖値だけでなく夜間から明け方の血圧を上昇させ、血管障害も進行させるそうだ。
「2型糖尿病患者に、睡眠改善薬を投与すると、睡眠指標の改善とともに、早朝高血圧や高血糖の低下が見られる症例があります。交感神経の緊張の減弱も同時に見られ、この機序が重要だと考えています。
まだ患者数が少ないので、これから積み上げていかなければなりません」
こう話す稲葉教授によれば、2型糖尿病の40%に睡眠障害が見られ、正常の人の2倍程度も悪化。
さらに、すでに足のしびれや血糖不良による夜間頻尿などの自覚症状を持つ人は、睡眠障害の率が上昇。重度の睡眠時無呼吸症候群を併発している人も5%もいた。
「睡眠障害は、生活習慣病を構成する重要な病気のひとつであり、メタボリック症候群とは、双方向に増悪させる関係になっています。
そのため、生活習慣病を持つ人全員に睡眠障害を疑い、その有無を検討すべきだと思っています」(稲葉教授)
【睡眠障害改善薬を上手に利用する】
単に糖尿病で睡眠の質が落ちるだけでなく、睡眠障害を併発することで、メタボリック症候群の後押しをしてしまう。
それこそが、稲葉教授らが行っている研究のポイント。従来、血糖降下薬や抗圧薬を服用しても、コントロールがうまくいかない人の中には、睡眠障害が関与している可能性もある。
「将来的には、糖尿病などの生活習慣病の改善薬と同時に、睡眠障害改善薬を処方することで、コントロールがうまくいくようになることをイメージしています。
睡眠障害改善薬は、メラトニン受容体刺激薬やオレキシン阻害薬の登場で、これまでの習慣性や依存性のある薬剤とは異なる薬があります。それらをうまく利用することを考えています」
稲葉教授は、現在、2型糖尿病患者の睡眠障害を改善したときのデータを集め、臨床的なエビデンス(科学的根拠)にすべく、力を注いでいる。
「睡眠障害は無自覚であったり、昼間の眠気が強くても、一般医家や一般の方々に病気としては考えられていないのが問題です。一般医家でも睡眠障害をきちんと治療する。その認識を高めていく必要があると思っています」と稲葉教授。改善する方法を構築するために奮闘中だ。