【日本の病院の実力】聖路加国際病院・心血管センター 先天性心疾患患者の継続治療ネット作り
心臓の病気には、心筋梗塞や弁膜症、大動脈疾患などさまざまな種類がある。手術の技術や細い管を血管に入れるカテーテル治療など、医療の進歩は目覚ましい。
生まれながらに先天的な心臓病を患っていても、現在は、およそ9割の子どもが健康を取り戻し、成長できるようになっているという。
ただし、先天性心疾患の子どもは大人になっても、経過観察は不可欠なのだが、自治体運営の子ども病院では、18歳以上の受診が不可になることがある。
一般的な循環器内科を受診しても、先天性疾患の知識を持たない医師も少なくなく、継続医療を受けることが難しい。
そんな「成人先天性心疾患」の患者を救うべく、循環器内科の中に2011年国内初の診療部門を置いたのが、聖路加国際病院心血管センター。
国内の旗手役となり、全国のネットワーク作りを強化している。
「成人先天性心疾患の患者さんは、約45万人と推計されています。小児科から循環器内科への橋渡しの仕組み作りは、始まったばかりで、まだ十分とはいえません。
また、一般の方々の認知度も低い。この状況を変えたいと思っています」
こう話す丹羽公一郎心血管センター長(65)は、先天性心疾患治療のスペシャリスト。小児から成人まで、数多くの患者の診断と治療を行っている。
「一般的に、成人先天性心疾患の患者さんが、盲腸や胃潰瘍などになったときに、心疾患ゆえに治療を断られるケースもあります。
妊娠や出産も、専門知識を持った医師が診ないと難しい。そのため、患者さんは戸惑うことが多い。現在、この状況は少しずつですが、変わりつつあります」
丹羽センター長は、成人先天性心疾患の心臓に関わる問題点だけでなく、他の病気や日常生活の支障など、患者の抱える悩みをひとつでも取り除くべく奮闘してきた。
ドロップアウトした患者が、再び心臓が悪くなるケースもあり、1つの施設だけでなく、全国的なネットワーク作りの構築が不可欠と痛感している。
「基本は47都道府県に1つの基幹病院を設けることですが、まだ33病院にすぎません。
それを広げたい。そして、ドロップアウトした患者さんにも、再受診がしやすい環境を作りたいのです」
丹羽センター長は、同センターで、心臓に関わる病気のあらゆるスペシャリストの育成も後押ししている。
同病院は救急患者が搬送されることも多いだけに、総合力を駆使した医療を提供できるのが特徴だ。
「当院は、診療科の垣根がなく、チーム医療を構築しやすい環境です。基盤のある中で、それぞれの得意分野を生かした高度な医療を提供できるのが強みといえます。
そのひとつに、成人先天性心疾患もあり、現在、全国から患者さんが来院しています。このチーム医療をさらに発展させたいと思っています」と丹羽センター長。
行き場のない患者をひとりでも救うべく、力を注いでいる。
■2012年度実績
・手術総数357件
・心臓カテーテル検査・治療総数1352件
・先天性心疾患手術16件
・病院病床数520床
〔住所〕〒104-8560 東京都中央区明石町9の1
(電)03・3541・5151