【日本の病院の実力】QOL配慮した直腸がん治療 東京大学医学部附属病院
大腸がんの中でも、肛門に近い直腸に生じるがん(直腸がん)では、従来、手術による排尿機能や性機能などの低下が伴い、QOL(生活の質)は下がる傾向にあった。
直腸が骨盤内に位置し、排尿機能や性機能などを司る自律神経が密集する場所にあるからだ。神経を傷つけることなく、直腸がんを切除するのは難しい。
そこで、近年、患部を腹腔鏡で拡大し、キズも小さくて済む腹腔鏡下手術が広がりを見せている。
さらに、腹腔鏡に加えて、ロボットアームによって細部の手術が行いやすいロボット手術(ダヴィンチ)も登場。
ただし、直腸がんの腹腔鏡下手術は、全体の約半数にとどまり、ロボット手術も設備投資が必要なだけに、普及しているとは言い難い。
この状況を変えるべく、腹腔鏡下手術はもとより、2012年からロボット手術も導入し、直腸がんの完治と機能温存に力を入れているのが、東京大学医学部附属病院大腸・肛門外科。
直腸がんに対するロボット手術は、101例(2014年12月時点)を実施し、国内第2位の実績を誇る。
「人間の手で行う手術よりも、ロボット手術は手ぶれがなく、拡大鏡で自律神経の位置がはっきりわかるなど利点は多い。
今は自費診療で治療を行っていますが、健康保険と自費診療の併用可能な先進医療にすべく、厚労省に申請しているところです」
こう話す副病院長を兼務する同科の渡邉聡明教授(57)は、大腸がん治療のスペシャリスト。長年、直腸がん治療に力を入れている。そのひとつがロボット手術。
ただし、直腸がんは、大腸の上部に生じる結腸がんよりも、同じような個所に生じる局所再発がおよそ4倍と高い。機能温存だけでなく、局所の再発防止も成し遂げなければならない。
そこで、渡邉教授は、術前に化学療法と放射線療法を組み合わせた「術前化学放射線療法」も、積極的に行っている。
「術前化学放射線療法は、臨床試験でも局所再発を抑制し、有効性は確かめられています。しかし、私たちの研究では、放射線療法が効きにくい患者さんもいることがわかりました。
また、進行度合いや直腸がんの病態によっては、術前化学放射線療法が必要ではない患者さんもいます。その選別をより明確なものとするのが、今後の課題といえます」
渡邉教授は、すでに放射線療法が効きにくい遺伝子を幾つも特定している。
また、抗がん剤やがんを狙い撃ちにする分子標的薬の研究も行い、どのような直腸がんに、いずれの治療が有効かについて明らかにしつつある。
「手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療法で、個別化医療を実現しています。
ロボット手術の医療機器も進化し続けていますので、技術進歩を取り入れながら、精緻で品質の高い医療をこれからも提供していきたいと思っています」と渡邉教授。
より有効性の高い治療の開発に向け、邁進(まいしん)中だ。
〈データ〉2012年度実績
・結腸がん開腹手術 83件
・結腸がん腹腔鏡手術 93件
・直腸がん開腹手術 30件
・直腸がん腹腔鏡手術 47件
・病院病床数 1163床
〔住所〕〒113-8655東京都文京区本郷7の3の1
(電)03・3815・5411
直腸が骨盤内に位置し、排尿機能や性機能などを司る自律神経が密集する場所にあるからだ。神経を傷つけることなく、直腸がんを切除するのは難しい。
そこで、近年、患部を腹腔鏡で拡大し、キズも小さくて済む腹腔鏡下手術が広がりを見せている。
さらに、腹腔鏡に加えて、ロボットアームによって細部の手術が行いやすいロボット手術(ダヴィンチ)も登場。
ただし、直腸がんの腹腔鏡下手術は、全体の約半数にとどまり、ロボット手術も設備投資が必要なだけに、普及しているとは言い難い。
この状況を変えるべく、腹腔鏡下手術はもとより、2012年からロボット手術も導入し、直腸がんの完治と機能温存に力を入れているのが、東京大学医学部附属病院大腸・肛門外科。
直腸がんに対するロボット手術は、101例(2014年12月時点)を実施し、国内第2位の実績を誇る。
「人間の手で行う手術よりも、ロボット手術は手ぶれがなく、拡大鏡で自律神経の位置がはっきりわかるなど利点は多い。
今は自費診療で治療を行っていますが、健康保険と自費診療の併用可能な先進医療にすべく、厚労省に申請しているところです」
こう話す副病院長を兼務する同科の渡邉聡明教授(57)は、大腸がん治療のスペシャリスト。長年、直腸がん治療に力を入れている。そのひとつがロボット手術。
ただし、直腸がんは、大腸の上部に生じる結腸がんよりも、同じような個所に生じる局所再発がおよそ4倍と高い。機能温存だけでなく、局所の再発防止も成し遂げなければならない。
そこで、渡邉教授は、術前に化学療法と放射線療法を組み合わせた「術前化学放射線療法」も、積極的に行っている。
「術前化学放射線療法は、臨床試験でも局所再発を抑制し、有効性は確かめられています。しかし、私たちの研究では、放射線療法が効きにくい患者さんもいることがわかりました。
また、進行度合いや直腸がんの病態によっては、術前化学放射線療法が必要ではない患者さんもいます。その選別をより明確なものとするのが、今後の課題といえます」
渡邉教授は、すでに放射線療法が効きにくい遺伝子を幾つも特定している。
また、抗がん剤やがんを狙い撃ちにする分子標的薬の研究も行い、どのような直腸がんに、いずれの治療が有効かについて明らかにしつつある。
「手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療法で、個別化医療を実現しています。
ロボット手術の医療機器も進化し続けていますので、技術進歩を取り入れながら、精緻で品質の高い医療をこれからも提供していきたいと思っています」と渡邉教授。
より有効性の高い治療の開発に向け、邁進(まいしん)中だ。
〈データ〉2012年度実績
・結腸がん開腹手術 83件
・結腸がん腹腔鏡手術 93件
・直腸がん開腹手術 30件
・直腸がん腹腔鏡手術 47件
・病院病床数 1163床
〔住所〕〒113-8655東京都文京区本郷7の3の1
(電)03・3815・5411