頭を冷やす、硬い敷布団、寝る前の水…体臭・口臭を抑える睡眠法とは?
五味院長の「スッキリ!体臭で悩まなくなる話」
睡眠時や寝起きの体臭を気にしている人も多いのではないでしょうか? それは寝汗の質によって決まります。寝汗にも、臭わない「良い寝汗」と臭う「悪い寝汗」があります。
寝ている間に汗をかき、体温を下げることで、眠りの深度は深くなっていきます。つまり、ぐっすり寝ている時はよく汗をかき、眠りが浅い時はあまり汗をかいていません。熊が基礎代謝を抑えて体温を下げることで冬眠するように、私たちも、寝汗をかくことで毎日「一晩冬眠」や「プチ冬眠」をしているのです。
脳温が高いとドッと悪い寝汗が
ニオイを考えるとき、特に大切なのは寝入りばなの汗です。眠りにつくためには、寝入りばなに生理的な発汗をして脳温を下げることが必要です。つまり、睡眠初期の寝汗は睡眠導入剤のような働きをするのです。睡眠を深めるためにかく、こうした寝汗は、寝ている間にじんわりとかくため「良い寝汗」で臭くありません。
一方、ニオイの強い「悪い寝汗」もあります。まず、脳温が平熱より高くなっている場合は、急激に体温を下げようとして、汗が一気にドッと大量に出ます。こうした汗は、ニオイのもとになる成分が濃く臭い汗です。
次に、睡眠の浅い「レム睡眠」の時にかく汗です。レム睡眠の時の汗は、夢を見て興奮している時によく出ます。悪い夢を見て興奮のあまり目を覚ましたら、汗でぐっしょりとなっていた経験はあるでしょう。汗が一気に噴き出すように出るため、濃い臭い汗になります。予防は、精神的に安定した状態で寝ること、ストレスをためないことです。
もう一つの「悪い寝汗」は、慢性の疾患がある時にかく「盗汗(とうかん)」と呼ばれる汗です。結核や慢性気管支炎などの呼吸器疾患や白血病などの血液疾患のとき、寝ている間中、汗が漏れるように(文字通り、汗が盗まれるように)ジトーッと出る汗で、これも濃い臭い汗になります。
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入浴後のエアコンに注意! すぐに寝付けず…
臭い寝汗を避けるには、睡眠に入るのに必要な汗の量以上の寝汗をかかないようにすることです。まずは脳温が高いままで寝ないこと。前回説明した通り、入浴後すぐにエアコンの冷気に当たると皮膚温が急激に下がって発汗が止まり、脳温を平熱に戻せません。そのまま寝てもすぐには寝付けず、強引に寝ようとすると、通常の生理的発汗にプラスして、大量の汗を急激にかく必要が出てきます。つまり臭い汗となります。
入浴自体は、お湯で高めになった体温が下がっていくことで、スムーズに眠りに入るきっかけとなります。が、そのためには寝る1時間以上前に入浴すること、汗を自然乾燥させることで脳温を平熱近くまで下げてから寝ることが大切です。入眠時にエアコンで軽く頭部を冷やすことは、眠りに入りやすくするための手段として有効です。ただ、寝ている間中つけっぱなしにすると、体が冷え、汗腺機能の低下や夏バテの原因となるので注意しましょう。
暑さに弱い体質なら睡眠時もエアコンを
しかし、能動汗腺が少なく暑さに弱い体質の人は、熱帯夜の睡眠時熱中症の予防のためにも、睡眠中、エアコンを使用することが必要です。エアコンに加え、扇風機を体に直接当てないよう下に向けて使うと、空気が対流して汗が蒸発しやすくなり、その分、エアコンの設定温度を高めにできます。
夏の暑い日には、寝具の工夫も大切。夏の寝具は「敷き布団は硬め。掛け布団は軟らかめ」が基本です。硬めの敷き布団がいいのは皮膚を圧迫しやすいから。汗は圧迫されている部分で減少し、反対側の汗が増加する「半側発汗」という性質があります。例えば、仰向けに寝ている時に布団と接している背中側に汗をかいても、蒸発しないので体温を調節できません。ですから、背中の汗は減少させ、逆に蒸発しやすい胸側により多くの汗をかくのが体温調節には都合がよいのです。
掛け布団のほうは、出た汗がすばやく蒸発しやすいよう、軽めのタオルケットやガーゼケットがお薦めです。
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寝る前の水が寝起きの口臭を防ぐ
また、夜中にトイレに起きるのを避けるため、寝る前に水分を摂取しない人がいますが、脱水による睡眠時熱中症の危険が高まるほか、寝起きの口臭の原因にもなります。 ただし、寝る直前にたくさんの水を飲むと、尿を抑えて体液を保持する「抗利尿ホルモン」の分泌が止まり排尿を促します。それを避けるには、寝る1時間くらい前から少しずつ少量に分けて飲むこと。夜間にトイレに起きず、ぐっすりと眠ることができますよ。(五味常明 五味クリニック院長)
睡眠時や寝起きの体臭を気にしている人も多いのではないでしょうか? それは寝汗の質によって決まります。寝汗にも、臭わない「良い寝汗」と臭う「悪い寝汗」があります。
寝ている間に汗をかき、体温を下げることで、眠りの深度は深くなっていきます。つまり、ぐっすり寝ている時はよく汗をかき、眠りが浅い時はあまり汗をかいていません。熊が基礎代謝を抑えて体温を下げることで冬眠するように、私たちも、寝汗をかくことで毎日「一晩冬眠」や「プチ冬眠」をしているのです。
脳温が高いとドッと悪い寝汗が
ニオイを考えるとき、特に大切なのは寝入りばなの汗です。眠りにつくためには、寝入りばなに生理的な発汗をして脳温を下げることが必要です。つまり、睡眠初期の寝汗は睡眠導入剤のような働きをするのです。睡眠を深めるためにかく、こうした寝汗は、寝ている間にじんわりとかくため「良い寝汗」で臭くありません。
一方、ニオイの強い「悪い寝汗」もあります。まず、脳温が平熱より高くなっている場合は、急激に体温を下げようとして、汗が一気にドッと大量に出ます。こうした汗は、ニオイのもとになる成分が濃く臭い汗です。
次に、睡眠の浅い「レム睡眠」の時にかく汗です。レム睡眠の時の汗は、夢を見て興奮している時によく出ます。悪い夢を見て興奮のあまり目を覚ましたら、汗でぐっしょりとなっていた経験はあるでしょう。汗が一気に噴き出すように出るため、濃い臭い汗になります。予防は、精神的に安定した状態で寝ること、ストレスをためないことです。
もう一つの「悪い寝汗」は、慢性の疾患がある時にかく「盗汗(とうかん)」と呼ばれる汗です。結核や慢性気管支炎などの呼吸器疾患や白血病などの血液疾患のとき、寝ている間中、汗が漏れるように(文字通り、汗が盗まれるように)ジトーッと出る汗で、これも濃い臭い汗になります。
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入浴後のエアコンに注意! すぐに寝付けず…
臭い寝汗を避けるには、睡眠に入るのに必要な汗の量以上の寝汗をかかないようにすることです。まずは脳温が高いままで寝ないこと。前回説明した通り、入浴後すぐにエアコンの冷気に当たると皮膚温が急激に下がって発汗が止まり、脳温を平熱に戻せません。そのまま寝てもすぐには寝付けず、強引に寝ようとすると、通常の生理的発汗にプラスして、大量の汗を急激にかく必要が出てきます。つまり臭い汗となります。
入浴自体は、お湯で高めになった体温が下がっていくことで、スムーズに眠りに入るきっかけとなります。が、そのためには寝る1時間以上前に入浴すること、汗を自然乾燥させることで脳温を平熱近くまで下げてから寝ることが大切です。入眠時にエアコンで軽く頭部を冷やすことは、眠りに入りやすくするための手段として有効です。ただ、寝ている間中つけっぱなしにすると、体が冷え、汗腺機能の低下や夏バテの原因となるので注意しましょう。
暑さに弱い体質なら睡眠時もエアコンを
しかし、能動汗腺が少なく暑さに弱い体質の人は、熱帯夜の睡眠時熱中症の予防のためにも、睡眠中、エアコンを使用することが必要です。エアコンに加え、扇風機を体に直接当てないよう下に向けて使うと、空気が対流して汗が蒸発しやすくなり、その分、エアコンの設定温度を高めにできます。
夏の暑い日には、寝具の工夫も大切。夏の寝具は「敷き布団は硬め。掛け布団は軟らかめ」が基本です。硬めの敷き布団がいいのは皮膚を圧迫しやすいから。汗は圧迫されている部分で減少し、反対側の汗が増加する「半側発汗」という性質があります。例えば、仰向けに寝ている時に布団と接している背中側に汗をかいても、蒸発しないので体温を調節できません。ですから、背中の汗は減少させ、逆に蒸発しやすい胸側により多くの汗をかくのが体温調節には都合がよいのです。
掛け布団のほうは、出た汗がすばやく蒸発しやすいよう、軽めのタオルケットやガーゼケットがお薦めです。
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寝る前の水が寝起きの口臭を防ぐ
また、夜中にトイレに起きるのを避けるため、寝る前に水分を摂取しない人がいますが、脱水による睡眠時熱中症の危険が高まるほか、寝起きの口臭の原因にもなります。 ただし、寝る直前にたくさんの水を飲むと、尿を抑えて体液を保持する「抗利尿ホルモン」の分泌が止まり排尿を促します。それを避けるには、寝る1時間くらい前から少しずつ少量に分けて飲むこと。夜間にトイレに起きず、ぐっすりと眠ることができますよ。(五味常明 五味クリニック院長)