あなたの健康はお金で買えますか・・・? アラフォー男子とアラサー女子に訪れるリセット衝動
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アラフォー男子とアラサー女子に訪れるリセット衝動

男の40歳前後、女の30歳前後は仕事もプライベートも節目の時期。この不安定な時期には、思いがけない「リセット衝動」が現れることも。ゴーギャンと桐野夏生著作を例にとり、解説します。

43歳ゴーギャンはなぜ妻子を捨てて旅立ったのか?

19世紀フランス、ポスト印象派の巨匠ポール・ゴーギャンと言えば、「タヒチ」を舞台にした野性的な絵画で有名ですが、このゴーギャン、実は今で言う「ミドルエイジ・クライシス」(中年の危機)の象徴的存在だということをご存じでしょうか?

そもそも彼は画家になる前、現在で言う証券会社の社員として、何不自由ない生活を送っていました。家庭も順調で、奥さんと5人の子どもに囲まれた生活。絵画は趣味で描いているにすぎませんでした。しかし、19世紀後半、株式市場の暴落を経験して心境が一転、ゴーギャンは30代半ばでサラリーマンを辞めて画家となり、さらに妻子も捨てて43歳のときにタヒチへと渡ったのです。

このように、中年期になって急にすべてを捨て、自分の理想を果たしたいと葛藤する気持ちを「ゴーギャン・コンプレックス」と言います。

中年男子の心を揺るがす仕事と家庭の事情

中年期は精神的に成熟し、安定した年代だと考えられてきましたが、実は多くのプレッシャーや迷いに揺さぶられる時期なのです。公私ともに無我夢中で駆け抜けるのが20代、結婚して家庭を築き、職場でも第一線の仕事を任されるのが30代。ところが、40代では仕事も家庭も、状況がガラリと変わります。

まず、仕事では管理的、統率的な役割を期待されて責任が増えます。こうした業務に適合できない場合には無力感や挫折感を覚え、年齢的に求人の少ない状況では「ここでやるしかない」というプレッシャー、「できるだろうか」という不安、「こんな毎日で終わっていいのか」という迷いも渦巻きます。

また、家庭ではそろそろ子どもの手がかからなくなる頃。親のすねをかじりたがるのは金銭面くらいで、子どもは自立を目指して親から精神的に距離を置くようになります。夫婦関係も変わってきます。結婚当初はアツアツだった夫婦仲も40代にもなれば、空気のような存在になります。情熱やときめきとは、だいぶ離れた境地にいることにため息が深くなる頃です。

転機を迎えたとき、人は思いがけない夢を見る

こうした不安定な心情のなかにいると、ふっと極端な理想や夢の虜になるものです。思いもよらぬ異業種へ転身して夢だった店を開いたり、山奥で炭焼き職人になったり、陶芸家修行、アウトドアガイド、帰農というように自然に返る人もいます。ゴーギャンもまさに、同様の心情の中で理想を求めてタヒチへと旅立ったのでしょう。

ただし、築いてきた生活を捨てて理想へと旅立つ人の先には、順調な人生が待っているとはかぎりません。

ゴーギャンの絵画は存命中にはほとんど評価されず、タヒチでの孤独と貧困の生活の中、『われわれはどこから来たのか、われわれは何者か、われわれはどこに行くのか』という意味深な傑作を残して自殺を試み(未遂に終わる)、6年後に死去します。ミドルエイジ・クライシスを経て人生をリセットした人のうち、かなりの数の人が、ゴーギャンのように生活苦の末の孤独へと進んでいるのも、また現実でしょう。

『玉蘭』に見る「女子版ゴーギャン・コンプレックス」

ところで女性の場合、男性に比べれば中年期での急激な人生転換への衝動は、少ないのではないかと思います。結婚して家事と子育てに追われていると、「人生のやり直し」にまで気持ちを向かわせる余地はなく、生活を捨てる勇気も到底わかないのかもしれません。

しかし、結婚適齢期と呼ばれる30歳前後に突入した独身女性の場合、事情は異なります。結婚への選択を迫られるプレッシャーや仕事への挫折感、不安感、迷いの中から、理想へと駆り立てられる逃避行動が起こりやすくなるものです。

東京でのキャリア生活と恋愛に疲れた女性が突然会社を辞め、中国での留学生活の中で波乱の人生を経験する小説『玉蘭』(桐野夏生著、文春文庫)は、その象徴的な作品でもあります。ライフステージの変化期に突入した不安定な心情の中から、すべてをリセットして海外に逃避し、軌跡も前途も壊してしまいたくなる主人公有子の衝動的な行動には、多くの女性からの共感が集まりました。

タヒチへと旅立ったゴーギャンも、中国へと旅立った『玉蘭』の有子も、考える暇もなくがむしゃらに走ってきた人生がチェンジする端境期に、現実から遠い世界へと旅立つ欲求が生まれています。

結婚を考える時期、仕事での立場や役割が変わる時期、子育ての荷が降りる時期、そして、体力や性機能の衰えを感じる時期……たとえばこんな端境期には、男性の手にも女性の手にも、迷宮からの「招待状」が思いがけず届くのかもしれません。そのとき、あなたならどんな答えを出しますか?
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