子宮頸がんワクチンの接種率激減… まさに「日本の常識は世界の非常識」だ
昭和から平成にかけて活躍された評論家の竹村健一氏が亡くなりました。竹村氏を有名にした言葉に「日本の常識は世界の非常識」というものがあります。
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医療の世界にも、「日本の常識」の非常識さを示すことはたくさんあります。なかでも、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するワクチンは代表例といえるでしょう。
日本では2013年4月1日から予防接種法に基づいて12歳から15歳の女の子を対象にHPVワクチンを無料で接種できるようになりました。厚生労働省がワクチンの接種を勧奨したこともあって接種率が70%を超えました。
ところが、副作用問題が起きたため、厚労省は13年の6月14日にワクチン接種の勧奨を中断しました。その結果、ワクチンの接種率は1%未満に激減しました。
世界をみると「世界の常識は日本の非常識」の状態にあります。世界での120以上の国々でHPVワクチンの接種が行われています。オーストラリアでは14歳から15歳の女の子の16年における接種率は78%です。
WHO(世界保健機関)のワクチンの安全性に関する諮問委員会は、日本が中断を決めた1日前の6月13日、HPVワクチンの安全宣言をしていますし、国際産科婦人科連合も1億7500万回以上接種した結果としてHPVワクチンの安全性を表明しています。
米国がん協会も13年6月、14~19歳女子のHPVの感染率が56%も減少したことを発表しています。日本でワクチン接種の勧奨が中断されなかったら、これまでに子宮頸がんで死亡した5000人の女性の命を救えたという推計もあります。まさに「世界の常識は日本の非常識」というわけです。(山野医療専門学校副校長・中原英臣)