糖尿病を悪化させる冬の「食べ方」
糖尿病は悪化すると死に直結します。一般的に、冬の間に症状が悪化し、腎臓の機能が低下して、春になると人工透析に移行する患者さんが増えます。いったん人工透析を始めたら、もう止めることはできません。
糖尿病が怖いのは、人工透析を招く腎臓機能の低下に加えて、合併症として目の病気である「糖尿病性網膜症」や、手足のしびれなど末梢(まっしょう)神経が侵される「糖尿病性神経障害」を引き起こすことです。さらに、「心筋梗塞(こうそく)」「脳梗塞」の引き金にもなります。
私も糖尿病で薬を飲んでいる
じつは私は、2005年から、血糖値を下げるために薬が必要になりました。最近は、血糖降下薬の「グリミクロン」を朝夕1錠、「エクア」を朝夕1錠、「メトグルコ」を毎食後3~6錠、飲み始めています。
私が糖尿の気があるとされたのは 血糖値の検査で、HbA1c(過去1~2か月の血糖の平均値)が7.2と当時の基準値(6.2%未満が優、6.2~6.9%が良)を超えていたからです。薬を飲み始めて2、3か月で血糖値は下がりました。しかし、服用を止めると上がるので、以来、薬と血糖値の測定は欠かせなくなっています。
怖い低血糖
ただ、糖尿病が本当に怖いのは、高血糖ではなく低血糖です。血糖値を下げ過ぎてもいけないのです。低血糖になると、冷や汗をかいたり、目がかすんだりして集中力がなくなり、最後には言葉が出にくくなったり、呂律(ろれつ)が回わらなくなったりします。意識を失い、倒れる場合もあります。すでに私は、こうした経験を3度しています。
これは変だと思って、その時は即座にチョコレートなど甘い物を食べ、ことなきを得ています。もし、なにもしなかったら、そのまま意識を失ったかもしれません。糖尿病患者さんは、よく私と同じようなことを訴えます。ですから、常に甘い物を携行するようアドバイスしています。
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血糖や血圧をひたすら管理
糖尿病は、一度発症したら治すことはできないため、それ以上悪化しないよう、血糖値、血圧値といった数値をひたすらコントロールすることが治療のポイントになります。血糖値を下げるためにクスリを服用しますが、大事なのは食事療法です。というのは、糖尿病の原因は、遺伝的な部分もありますが、主に食事だからです。
問題は不健全な食事
2019年4月、アメリカの医学誌に、最新の研究報告が発表されました。ワシントン大学などによるこの研究は、約40か国の130人以上の研究者が参加して行われた大規模なもので、「不健全な食事」がいかに死に直結するかを明らかにしました。年齢や性別、地理的な影響、経済状態などにかかわらず、食事は主要な死の原因となっていました。
2017年、世界で死亡した1090万人の主な死因は、第1位が心血管疾患、第2位ががんで、糖尿病はこれに続く第3位でした。そして、心血管疾患による949万7300人、がんによる91万3100人、糖尿病による33万8700人の死亡に、食事が関連していました。
炭水化物や塩分の摂り過ぎはダメ
では、どんな食事が不健全かというと、全粒穀物や野菜、果物の摂取が少ないこと、塩分の摂取量が多いことです。また、脂肪の多い肉類、糖質、トランス脂肪酸の摂(と)り過ぎも指摘されています。具体的に言うと、ご飯などの炭水化物、塩分を摂り過ぎるのはよくありません。私は、糖尿の気が出てから、食生活を変え、とくに炭水化物を摂り過ぎないようにするため、夕食にはご飯を控えています。野菜類も以前に比べ、多く摂るようにしています。
食習慣が変わる冬は要注意
日本人にとって、冬は食事が普段と大きく変わる時期です。冬になると、温かい鍋物、汁物などを食べる機会が多くなります。ご飯はもとより、うどん、お餅など、炭水化物の摂取量も増えます。しかも、年末年始には、つい暴飲暴食しがちです。冬につきものの、鍋物、うどん、ラーメン、お餅、おせんべい、ミカンなどは、血糖値を上昇させるので要注意です。
日本人は欧米人と比べると、肥満の人は多くありません。それなのに、糖尿病患者が多いのは、民族として遺伝的な要素を持ち合わせていると考えられ、最近は糖尿病を引き起こす遺伝子の解明も進んでいます。遺伝的に糖尿病になりやすいのに、さらに偏食を重ねたら、死期を早めるだけです。冬場は十分気をつけましょう。
富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている
糖尿病が怖いのは、人工透析を招く腎臓機能の低下に加えて、合併症として目の病気である「糖尿病性網膜症」や、手足のしびれなど末梢(まっしょう)神経が侵される「糖尿病性神経障害」を引き起こすことです。さらに、「心筋梗塞(こうそく)」「脳梗塞」の引き金にもなります。
私も糖尿病で薬を飲んでいる
じつは私は、2005年から、血糖値を下げるために薬が必要になりました。最近は、血糖降下薬の「グリミクロン」を朝夕1錠、「エクア」を朝夕1錠、「メトグルコ」を毎食後3~6錠、飲み始めています。
私が糖尿の気があるとされたのは 血糖値の検査で、HbA1c(過去1~2か月の血糖の平均値)が7.2と当時の基準値(6.2%未満が優、6.2~6.9%が良)を超えていたからです。薬を飲み始めて2、3か月で血糖値は下がりました。しかし、服用を止めると上がるので、以来、薬と血糖値の測定は欠かせなくなっています。
怖い低血糖
ただ、糖尿病が本当に怖いのは、高血糖ではなく低血糖です。血糖値を下げ過ぎてもいけないのです。低血糖になると、冷や汗をかいたり、目がかすんだりして集中力がなくなり、最後には言葉が出にくくなったり、呂律(ろれつ)が回わらなくなったりします。意識を失い、倒れる場合もあります。すでに私は、こうした経験を3度しています。
これは変だと思って、その時は即座にチョコレートなど甘い物を食べ、ことなきを得ています。もし、なにもしなかったら、そのまま意識を失ったかもしれません。糖尿病患者さんは、よく私と同じようなことを訴えます。ですから、常に甘い物を携行するようアドバイスしています。
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血糖や血圧をひたすら管理
糖尿病は、一度発症したら治すことはできないため、それ以上悪化しないよう、血糖値、血圧値といった数値をひたすらコントロールすることが治療のポイントになります。血糖値を下げるためにクスリを服用しますが、大事なのは食事療法です。というのは、糖尿病の原因は、遺伝的な部分もありますが、主に食事だからです。
問題は不健全な食事
2019年4月、アメリカの医学誌に、最新の研究報告が発表されました。ワシントン大学などによるこの研究は、約40か国の130人以上の研究者が参加して行われた大規模なもので、「不健全な食事」がいかに死に直結するかを明らかにしました。年齢や性別、地理的な影響、経済状態などにかかわらず、食事は主要な死の原因となっていました。
2017年、世界で死亡した1090万人の主な死因は、第1位が心血管疾患、第2位ががんで、糖尿病はこれに続く第3位でした。そして、心血管疾患による949万7300人、がんによる91万3100人、糖尿病による33万8700人の死亡に、食事が関連していました。
炭水化物や塩分の摂り過ぎはダメ
では、どんな食事が不健全かというと、全粒穀物や野菜、果物の摂取が少ないこと、塩分の摂取量が多いことです。また、脂肪の多い肉類、糖質、トランス脂肪酸の摂(と)り過ぎも指摘されています。具体的に言うと、ご飯などの炭水化物、塩分を摂り過ぎるのはよくありません。私は、糖尿の気が出てから、食生活を変え、とくに炭水化物を摂り過ぎないようにするため、夕食にはご飯を控えています。野菜類も以前に比べ、多く摂るようにしています。
食習慣が変わる冬は要注意
日本人にとって、冬は食事が普段と大きく変わる時期です。冬になると、温かい鍋物、汁物などを食べる機会が多くなります。ご飯はもとより、うどん、お餅など、炭水化物の摂取量も増えます。しかも、年末年始には、つい暴飲暴食しがちです。冬につきものの、鍋物、うどん、ラーメン、お餅、おせんべい、ミカンなどは、血糖値を上昇させるので要注意です。
日本人は欧米人と比べると、肥満の人は多くありません。それなのに、糖尿病患者が多いのは、民族として遺伝的な要素を持ち合わせていると考えられ、最近は糖尿病を引き起こす遺伝子の解明も進んでいます。遺伝的に糖尿病になりやすいのに、さらに偏食を重ねたら、死期を早めるだけです。冬場は十分気をつけましょう。
富家 孝(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。医師の紹介などを手がける「ラ・クイリマ」代表取締役。1947年、大阪府生まれ。東京慈恵会医大卒。新日本プロレス・リングドクター、医療コンサルタントを務める。著書は「『死に方』格差社会」など65冊以上。「医者に嫌われる医者」を自認し、患者目線で医療に関する問題をわかりやすく指摘し続けている