育児相談の現場から(14)生後2か月、揺さぶられっ子症候群が心配
育児に関する疑問や悩みに答える本シリーズ。今回は、「揺さぶられっ子症候群」を心配するお母さんからの質問です。
「生後3か月の子供を床にマットレスを敷いて寝かせていたが、父親がマットレスを引っ張って移動させて頭が揺れた。揺さぶられっこ症候群にならないだろうか?」というもの。
◆揺さぶられっ子症候群とは
「揺さぶられっ子症候群」は、1970年代に米国で初めて症例が報告されました。1980年代には虐待の一指標と見なされるようになり、日本でも2002年から母子健康手帳に記載されるようになりました。
揺さぶられっこ症候群とは、乳児の身体を大きく揺することで、網膜出血、硬膜下血腫、クモ膜下血腫が引き起こされることを指します。
新生児期~生後6か月の赤ちゃんは、頭部が身体に比べて大きく重いことに加えて、頸部(首)の筋肉が未発達なので、まだ自分の力では支えられません。いわゆる、「首がすわっていない」状態です。
◆首がすわっていない時期は特に注意
首がすわっていない赤ちゃんは、揺すった時の振幅が大きく、脳も未発達でクモ膜下腔が大きいため、揺さぶれることで脳組織の移動が大きくなるのです。
脳表面の血管も弱いため、衝撃を受けると出血しやすく、強く揺すられると揺さぶられっ子症候群になってしまうのです。
つまり、首がすわっていない新生児期~生後6か月未満の間が、揺さぶられっ子症候群になりやすい時期と言えます。
◆通常のあやしの範囲ではまず起こらない
最近では揺さぶられっ子症候群の認知度も上がってきたため、「父親が抱いていて、揺すってあやしていた」「親戚の人がお尻や背中あたりを強く叩いてあやしていたが大丈夫か」など、この疾患を心配する質問が増えています。
首がすわっていない赤ちゃんの扱いに不安になるお母さんの気持ちももっともです。しかし、普段のあやしや世話の範囲では揺さぶられっ子症候群になることはまずありません。冒頭の質問の方のケースも、心配する必要はないでしょう。
ただし、車に長時間乗せることや、頭が強く揺さぶられるような遊びなどには注意が必要です。
◆揺さぶられっ子症候群の症状と診断
赤ちゃんが揺さぶられっ子症候群になってしまった場合、グッタリしている、顔色が悪い、ミルクを飲まない、おう吐する、笑わない、痙攣する、長時間寝続ける──などの症状が見られます。
特に、長時間眠り続け、半日以上何も飲まず、起こしてもすぐ寝てしまうようなら、すぐに小児科に相談しましょう。赤ちゃんの体をむやみに動かさず、医師の指示を仰ぎます。必要に応じて、病院で検査を受けます。
脳のCTやMRIによって揺さぶられっ子症候群であることが判明した場合は、すぐに手術が必要です。頭蓋内血腫除去術という、頭蓋骨の中の血の固まりを取り除く手術が行われます。
◆赤ちゃんのあやし方の注意点
頭が前後にガクガク揺れるほど強く揺る、または赤ちゃんを空中に放り投げてキャッチするといったような、身体全体を揺さぶり続ける行為はしてはいけません。
授乳後にゲップをさせる時は、首の後ろを手で支え、背中を下から上にさするようにします。背中を強く叩くのはNGです。あやすときは、頭と腰をしっかり支えてゆっくりあやしましょう。
泣き止まない子に対して、つい強く揺すってしまう人もいるようです。しかし、強く揺すると赤ちゃんは興奮してしまいます。そんな時は、一度布団に寝かせてみたりしてください。
◆チャイルドシートを正しく使う
チャイルドシートは、月齢に合ったサイズを使用して正しく装着しましょう。長時間車に乗せる時は、1時間半~2時間ごとに休憩を取り、その際はチャイルドシートから降ろします。
なお、首のすわっていない赤ちゃんを長時間車に乗せる場合は、水平型のチャイルドシートが好ましく、頭を保持するヘッドギアがあるのが理想的です。ヘッドギアがない場合はドーナツクッションなどを利用しましょう。
●南部洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師、株式会社とらうべ社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべを設立
「生後3か月の子供を床にマットレスを敷いて寝かせていたが、父親がマットレスを引っ張って移動させて頭が揺れた。揺さぶられっこ症候群にならないだろうか?」というもの。
◆揺さぶられっ子症候群とは
「揺さぶられっ子症候群」は、1970年代に米国で初めて症例が報告されました。1980年代には虐待の一指標と見なされるようになり、日本でも2002年から母子健康手帳に記載されるようになりました。
揺さぶられっこ症候群とは、乳児の身体を大きく揺することで、網膜出血、硬膜下血腫、クモ膜下血腫が引き起こされることを指します。
新生児期~生後6か月の赤ちゃんは、頭部が身体に比べて大きく重いことに加えて、頸部(首)の筋肉が未発達なので、まだ自分の力では支えられません。いわゆる、「首がすわっていない」状態です。
◆首がすわっていない時期は特に注意
首がすわっていない赤ちゃんは、揺すった時の振幅が大きく、脳も未発達でクモ膜下腔が大きいため、揺さぶれることで脳組織の移動が大きくなるのです。
脳表面の血管も弱いため、衝撃を受けると出血しやすく、強く揺すられると揺さぶられっ子症候群になってしまうのです。
つまり、首がすわっていない新生児期~生後6か月未満の間が、揺さぶられっ子症候群になりやすい時期と言えます。
◆通常のあやしの範囲ではまず起こらない
最近では揺さぶられっ子症候群の認知度も上がってきたため、「父親が抱いていて、揺すってあやしていた」「親戚の人がお尻や背中あたりを強く叩いてあやしていたが大丈夫か」など、この疾患を心配する質問が増えています。
首がすわっていない赤ちゃんの扱いに不安になるお母さんの気持ちももっともです。しかし、普段のあやしや世話の範囲では揺さぶられっ子症候群になることはまずありません。冒頭の質問の方のケースも、心配する必要はないでしょう。
ただし、車に長時間乗せることや、頭が強く揺さぶられるような遊びなどには注意が必要です。
◆揺さぶられっ子症候群の症状と診断
赤ちゃんが揺さぶられっ子症候群になってしまった場合、グッタリしている、顔色が悪い、ミルクを飲まない、おう吐する、笑わない、痙攣する、長時間寝続ける──などの症状が見られます。
特に、長時間眠り続け、半日以上何も飲まず、起こしてもすぐ寝てしまうようなら、すぐに小児科に相談しましょう。赤ちゃんの体をむやみに動かさず、医師の指示を仰ぎます。必要に応じて、病院で検査を受けます。
脳のCTやMRIによって揺さぶられっ子症候群であることが判明した場合は、すぐに手術が必要です。頭蓋内血腫除去術という、頭蓋骨の中の血の固まりを取り除く手術が行われます。
◆赤ちゃんのあやし方の注意点
頭が前後にガクガク揺れるほど強く揺る、または赤ちゃんを空中に放り投げてキャッチするといったような、身体全体を揺さぶり続ける行為はしてはいけません。
授乳後にゲップをさせる時は、首の後ろを手で支え、背中を下から上にさするようにします。背中を強く叩くのはNGです。あやすときは、頭と腰をしっかり支えてゆっくりあやしましょう。
泣き止まない子に対して、つい強く揺すってしまう人もいるようです。しかし、強く揺すると赤ちゃんは興奮してしまいます。そんな時は、一度布団に寝かせてみたりしてください。
◆チャイルドシートを正しく使う
チャイルドシートは、月齢に合ったサイズを使用して正しく装着しましょう。長時間車に乗せる時は、1時間半~2時間ごとに休憩を取り、その際はチャイルドシートから降ろします。
なお、首のすわっていない赤ちゃんを長時間車に乗せる場合は、水平型のチャイルドシートが好ましく、頭を保持するヘッドギアがあるのが理想的です。ヘッドギアがない場合はドーナツクッションなどを利用しましょう。
●南部洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師、株式会社とらうべ社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべを設立