タトゥー大流行のいま「ヤクザはどんな刺青を入れているのか?」〈暴力団幹部が解説
「自分が背中に刺青を入れたのは20代の中ごろだった。ヤクザにとって刺青は、切り離せないほど重要。自分の体に『墨を入れる』ということは、それまでとは違う人生に進むということだ」
ヤクザにとっての刺青の意味について、このように強調するのは、首都圏で活動している指定暴力団幹部だ。
暴力団員にとって「刺青」とは?
タトゥーとも呼ばれ、ファッションの一部と考える若者もいる刺青だが、暴力団員などの反社会的勢力を連想する人も多い。実際に、暴力団幹部の多くは背中に刺青を入れており、暴力団社会で生きていく上では重要視されている慣習となっている。
冒頭の指定暴力団幹部が続ける。
「ヤクザとして刺青を入れるのは、この道で生きていく決意を固めたということ。カタギ(一般人)の社会には、もうこれで戻らないという気持ちで入れた。最近は、親分や兄貴分の名前を自分の体に入れる人もいる」
親分の名を広めるという目的も
暴力団では強制的に刺青を入れさせられるわけではなく、多くは自主的に入れているとされる。
その中でも前出の指定暴力団幹部が指摘するように、いまは若い暴力団員を中心に、人名を刺青で入れるのが流行っているという。
実際に親分の名前を体に入れている別の指定暴力団幹部が、詳しい事情を説明する。
「自分の場合は胸の中央、少し下の部分に組長の名前を入れている。これは子分としてこの道で生きていくことを示すもの。例えば、刑務所の風呂で裸になった時に、身体に名前が入っていると、周囲から『この人はあの親分のところの若い衆か』と認識されることになる。それと同時に、親分の名を広めるという目的もある」
痛みに耐えることにも意味がある
刺青は、針で肌を傷つけながら着色料で描いていくことになる。その処置は激痛を伴うようだ。
「刺青を入れるのはとにかく痛い。耐えられない限界の痛みのちょっと手前。かなりの激痛だ。彫師に入れてもらうのは1回につき2時間から3時間くらい。それを1週間に2日やるのが限界だ。人によっては、翌日に発熱して寝込んでしまうとか、腫れあがってしまうということもあると聞いている。この痛みに耐えることが『ヤクザになる』ということにつながってくる」(前出・冒頭の指定暴力団幹部)
そもそも刺青は、江戸時代には鳶職や火消し、博徒などの間で流行した。デザインは竜や鯉、鬼、生まれ年の干支にちなんだもののほか、流行していた芝居の登場人物も人気があったという。一方で、顔や腕にワンポイントで入れた刺青は当時の刑罰の一種でもあった。
現代の暴力団員が好むデザインは、竜、鯉、観音像などさまざま。竜や鯉については「昇り竜」や「鯉の滝登り」など、出世するとのイメージにつながることから人気があるという。観音菩薩像や動植物などを彫ることもある。これらは、一般的には「和彫り」と呼ばれている。上半身全体に入れたり腕だけなど様々だ。倶利迦羅紋々(くりからもんもん)という俗称もある。
「彫師は結構な忙しさだ」
彫師の元で、デザイン帳のようなものが提示されて選ぶこともあるという。料金は1時間につき、1万~2万円が相場のようだ。
若者に人気のタトゥーも、刺青と基本的に同じもので、針で肌に傷をつけて着色料を入れていく。一般的にはファッションの一種で「洋彫り」と称される。アルファベットやローマ数字を並べたものや、動植物、幾何学模様などこちらもデザインは様々だ。欧米の一部の人気ロックミュージシャンや俳優らがタトゥーを入れていることなどから、国内でも若者の間で流行している。
「いまは若者がファッション感覚でタトゥーを入れる。その人気のおかげで彫師は結構な忙しさだ。祭りで神輿を担ぐ際に格好良く見せたいという素人さんもいて、和彫りも人気があるらしい」(同前)
近年、行政や企業、一般社会でのコンプライアンス(法令順守、モラル順守)の強化などによって暴力団などの反社会的勢力の排除が進められる。温泉やサウナなどの施設では、「暴力団員はお断り」の注意書きとともに「刺青のある方は入浴不可」と書かれた看板もよく見かける。それでも、刺青は一般人にも広がりつつある。
「最後まで入れたかったが、カネがなくて」
長年にわたり暴力団を相手にした捜査を続けてきた警察当局のベテラン刑事は、刺青について「体には負担が大きい」と指摘する。
「刺青を入れると皮膚の機能が大きく低下し、内臓に負担がかかるとされる。ただでさえ、親分クラスになると毎晩、朝まで酒を飲んだりと病気がち。だから、事件を起こして刑務所に入ることで健康を取り戻す、というパターンの暴力団員も多い」
暴力団犯罪の捜査を指揮してきた警察幹部OBが体験を語る。
「かなり前のことだが、あるヤクザを逮捕したら背中の刺青が未完成だった。それで聞いてみたら、『最後まで入れたかったが、カネがなくて』と言い訳していた。恐らく痛みに耐えられなかったのではないか。『刺青を入れる時の激痛に耐えてこそヤクザ』と公言する者もいたが、そういうことだろう」
体への負担から健康を害する可能性もある刺青。それでも、刺青にこだわりを持つ暴力団員は多いのが実情だ。
「山中に埋められた腐乱死体でも刺青だけはキレイに…」警察幹部が明かした“ヤクザと刺青”の本当の関係 へ続く
ヤクザにとっての刺青の意味について、このように強調するのは、首都圏で活動している指定暴力団幹部だ。
暴力団員にとって「刺青」とは?
タトゥーとも呼ばれ、ファッションの一部と考える若者もいる刺青だが、暴力団員などの反社会的勢力を連想する人も多い。実際に、暴力団幹部の多くは背中に刺青を入れており、暴力団社会で生きていく上では重要視されている慣習となっている。
冒頭の指定暴力団幹部が続ける。
「ヤクザとして刺青を入れるのは、この道で生きていく決意を固めたということ。カタギ(一般人)の社会には、もうこれで戻らないという気持ちで入れた。最近は、親分や兄貴分の名前を自分の体に入れる人もいる」
親分の名を広めるという目的も
暴力団では強制的に刺青を入れさせられるわけではなく、多くは自主的に入れているとされる。
その中でも前出の指定暴力団幹部が指摘するように、いまは若い暴力団員を中心に、人名を刺青で入れるのが流行っているという。
実際に親分の名前を体に入れている別の指定暴力団幹部が、詳しい事情を説明する。
「自分の場合は胸の中央、少し下の部分に組長の名前を入れている。これは子分としてこの道で生きていくことを示すもの。例えば、刑務所の風呂で裸になった時に、身体に名前が入っていると、周囲から『この人はあの親分のところの若い衆か』と認識されることになる。それと同時に、親分の名を広めるという目的もある」
痛みに耐えることにも意味がある
刺青は、針で肌を傷つけながら着色料で描いていくことになる。その処置は激痛を伴うようだ。
「刺青を入れるのはとにかく痛い。耐えられない限界の痛みのちょっと手前。かなりの激痛だ。彫師に入れてもらうのは1回につき2時間から3時間くらい。それを1週間に2日やるのが限界だ。人によっては、翌日に発熱して寝込んでしまうとか、腫れあがってしまうということもあると聞いている。この痛みに耐えることが『ヤクザになる』ということにつながってくる」(前出・冒頭の指定暴力団幹部)
そもそも刺青は、江戸時代には鳶職や火消し、博徒などの間で流行した。デザインは竜や鯉、鬼、生まれ年の干支にちなんだもののほか、流行していた芝居の登場人物も人気があったという。一方で、顔や腕にワンポイントで入れた刺青は当時の刑罰の一種でもあった。
現代の暴力団員が好むデザインは、竜、鯉、観音像などさまざま。竜や鯉については「昇り竜」や「鯉の滝登り」など、出世するとのイメージにつながることから人気があるという。観音菩薩像や動植物などを彫ることもある。これらは、一般的には「和彫り」と呼ばれている。上半身全体に入れたり腕だけなど様々だ。倶利迦羅紋々(くりからもんもん)という俗称もある。
「彫師は結構な忙しさだ」
彫師の元で、デザイン帳のようなものが提示されて選ぶこともあるという。料金は1時間につき、1万~2万円が相場のようだ。
若者に人気のタトゥーも、刺青と基本的に同じもので、針で肌に傷をつけて着色料を入れていく。一般的にはファッションの一種で「洋彫り」と称される。アルファベットやローマ数字を並べたものや、動植物、幾何学模様などこちらもデザインは様々だ。欧米の一部の人気ロックミュージシャンや俳優らがタトゥーを入れていることなどから、国内でも若者の間で流行している。
「いまは若者がファッション感覚でタトゥーを入れる。その人気のおかげで彫師は結構な忙しさだ。祭りで神輿を担ぐ際に格好良く見せたいという素人さんもいて、和彫りも人気があるらしい」(同前)
近年、行政や企業、一般社会でのコンプライアンス(法令順守、モラル順守)の強化などによって暴力団などの反社会的勢力の排除が進められる。温泉やサウナなどの施設では、「暴力団員はお断り」の注意書きとともに「刺青のある方は入浴不可」と書かれた看板もよく見かける。それでも、刺青は一般人にも広がりつつある。
「最後まで入れたかったが、カネがなくて」
長年にわたり暴力団を相手にした捜査を続けてきた警察当局のベテラン刑事は、刺青について「体には負担が大きい」と指摘する。
「刺青を入れると皮膚の機能が大きく低下し、内臓に負担がかかるとされる。ただでさえ、親分クラスになると毎晩、朝まで酒を飲んだりと病気がち。だから、事件を起こして刑務所に入ることで健康を取り戻す、というパターンの暴力団員も多い」
暴力団犯罪の捜査を指揮してきた警察幹部OBが体験を語る。
「かなり前のことだが、あるヤクザを逮捕したら背中の刺青が未完成だった。それで聞いてみたら、『最後まで入れたかったが、カネがなくて』と言い訳していた。恐らく痛みに耐えられなかったのではないか。『刺青を入れる時の激痛に耐えてこそヤクザ』と公言する者もいたが、そういうことだろう」
体への負担から健康を害する可能性もある刺青。それでも、刺青にこだわりを持つ暴力団員は多いのが実情だ。
「山中に埋められた腐乱死体でも刺青だけはキレイに…」警察幹部が明かした“ヤクザと刺青”の本当の関係 へ続く