年1万人が診断される「子宮頸がん」 20歳以上は定期的な検診を…がんになる前段階で発見
子宮頸(けい)がんの患者は、若い女性に多く、子どもをあきらめたり命を失ったりする人が少なくありません。定期的な検診は、早期発見に役立ち、命も子宮も守ります。検診を受ける回数を減らせる新しい方法の有効性も確かめられました。(利根川昌紀)
患者 毎年1万人
子宮頸がんの原因は、主にヒトパピローマウイルス(HPV)です。多くの女性が性交渉により感染しますが、たいていは免疫の働きで排除されます。ただ、ごく一部の人は感染が持続し、数年以上かけて、子宮頸がんを発症します。 国内では、1年間に約1万人が新たに診断され、毎年約2800人が亡くなっています。患者の多くは、20~40歳代です。
子宮頸がん検診は、国の指針では、20歳以上の女性が対象で、2年に1回受けることになっています。 子宮の入り口にあたる頸部をブラシが付いた器具でこすって細胞を採取し、異常がないかどうかを顕微鏡で調べる「細胞診」を実施します。がん細胞のほか、がんに進行する可能性がある「異形成」という細胞もわかります。
杏林大産科婦人科准教授の森定徹さんは「定期的に検診を受ければ、がんになる前の段階で見つけられる可能性が高いです。異常が見つかれば、必ず精密検査を受けてください」と強調します。 東京都八王子市の女性(44)は2年ほど前、検診で異形成が見つかりました。同市内の西島産婦人科医院で精密検査を受け、経過をみていましたが、状態は改善せず、昨年11月、レーザーで患部を焼く治療を受けました。
女性は「検診を受けていなかったら気がつかないうちに、子宮頸がんを発症していたかもしれません。これからも検診を受けていこうと思います」と話します。 院長の西島重信さんは、「新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかでも、ためらわずに定期的に検診を受けてほしい」と呼びかけています。
「HPV検査」追加
国立がん研究センターは昨夏、子宮頸がん検診のガイドラインを見直しました。従来、推奨していた方法は細胞診のみでしたが、新たに「HPV検査」単独の実施も加えました。細胞がHPVに感染しているかどうかを調べる検査です。この検査による検診でがんの発症を減らす効果があるとする研究が海外から複数報告されています。
検体の採取方法は、細胞診と同じです。ガイドラインでは、30~60歳が対象で5年ごとに受けるのが望ましいとしました。 HPV検査は、ウイルスがあるだけで陽性と判定されます。このため、将来、結果的にがんを発症しない人でも、陽性と判定される人が、細胞診より多く出る可能性があります。 この検査を実際に定期検診として導入するには、まだ時間がかかるようです。
同センター検診研究部長の中山富雄さんは「HPV検査で陽性だった人も定期的に医療機関で経過をみる必要があります。この検査を本格的に導入するには、陽性になった人に必ず精密検査を受けてもらい、その後も医療機関で経過をみてもらえるようにする体制を作っていかなければなりません」と説明しています。