スマホアダルト動画依存、睡眠障害・ED・うつ病・認知症につながるリスクも

「スマホ依存・アダルト動画依存」チェックリスト
近年、スマホでアダルト動画を延々と見てしまい、仕事や日常生活に支障をきたす人が絶えない。そんな現実を摘出した書籍『インターネットポルノ中毒』(DU BOOKS刊)が注目を集めている。著者は病理学・解剖学・生理学の専門家のゲーリー・ウィルソン氏。
同書は、スマホの普及をはじめとするネットの発達に伴って「ポルノ中毒者」が増えたと指摘する。昨年、スマホ依存について分析した『スマホ脳』(新潮新書)が50万部を超えるベストセラーになったが、ゲーリー氏の著書は過激で大量のネットポルノが人の脳を麻痺させて依存を起こさせるメカニズムに迫るもので、いわば「エロスマホ脳」を研究したものと言える。
そこには、〈仕事に行くのもいや、友達や家族とのつきあいも、特にポルノ儀式(アダルト動画を見ること)と比べたらどうでもいいように思えた〉〈ときには完璧なネタを求めて一日中探し回る。決して満足することはない。「もっとくれ」と脳がいつも言い続ける〉といった、実際にアダルト動画に依存してしまった人たちの生々しい声も多数紹介されている。
“エロスマホ脳”の体への影響は多岐にわたる。そのひとつが睡眠障害だ。埼玉県在住のA氏(57)は、「夜家族が寝静まってから、毎日のように1時間以上も動画鑑賞。おかげでいつも寝不足で、日中もボーッとしてしまう」と語る。
「ポルノを見ると、その刺激的な内容に反応して脳内の快楽物質であるドーパミンが分泌されます」と話すのは、『もの忘れとウツがなくなる「脳」健康法』(静山社文庫)の著者で、依存症に詳しいおくむらメモリークリニック院長の奥村歩医師。。
「ドーパミンは脳を覚醒状態にするので、スマホでポルノ動画を見ている限り、睡眠欲が遠ざかっていきます。また通常夜になるとメラトニンという睡眠ホルモンが分泌されますが、スマホの強い光がメラトニンの分泌を抑えてしまう。二重の意味で睡眠障害が起きやすいんです」(奥村医師)
男性にとってさらに恐ろしいのが、エロスマホ脳がEDを招くことだ。この3年ほど“男性力”が悪くなったと悩んでいる北海道在住のB氏(45・自営業)が語る。
「EDといっても、アダルト動画を見ながら自分ではできるんです。ただ、いざ妻とするとなると、まったく反応してくれない。最初の頃は“ちょっと疲れてるから”などと言い訳をしていましたが、いまは完全にレス状態。夫婦関係も気まずくなっています」
B氏がスマホでポルノ動画を見るようになったのは、4年ほど前のことだったという。「最初はお気に入りの女優の無料動画を見つけて、それをオカズにしていました。ところが、だんだん見たことのある動画だと満足できなくなってきて……。“これならいいか”という新しい動画を見つけるまでは納得できないんですよね。
動画の内容も、次第に普通のものでは興奮できなくなってきて、過激な動画ばかりを求めてしまう。そんな自分が嫌になります」(B氏)B氏のようなケースについて、ゆうメンタルクリニック院長のゆうきゆう医師が説明する。「ネットポルノから得られる過度の刺激に慣れてしまって、実際の性行為でドーパミンが分泌しづらくなるケースは多い。実際の性行為ではしないような過激な映像ばかりを見ていると、これはより顕著になってきます」
冒頭で紹介した書籍『インターネットポルノ中毒』では、自然の性行為よりもポルノ動画にハマってしまうのは、人間の生物としての本能にも原因があると説明している。人間を含む哺乳類のオスは、種の保存のためにできるだけ多くのメスと性行為をしようとする。そのためまだ性行為をしたことのないメスに対してより興奮するようにできている。
ネットポルノには、「まだ性行為をしたことのない異性」が誇張された性的アピールを持って無数に出てくるため、オスとしての本能が刺激され、気づかぬうちに依存状態になってしまうと結論を導いている。
脳がフリーズする
前出・奥村医師によれば、うつ病を患うケースもあるという。「脳は静止画より動画に対して敏感に反応します。その代償として、カロリーを大量に消費して“脳疲労”に陥ってしまう。いわゆる処理能力を超えてパソコンがフリーズしてしまうような状態です。
こうなると脳の神経伝達物質が正しく分泌されず、心身の調整機能も低下する。怒りっぽくなったり、ふさぎ込みやすくなったりと感情が不安定になるんですね。その先にあるのがうつ病です。スマホの動画は色彩と光の刺激が強いため、脳の疲労度が上がりやすく、うつ病のリスクもグンと高まります」
うつ状態が続くと、将来的な認知症のリスクも増大する。「とくに高齢者の場合、うつ病は記憶力や集中力の低下に直結する。他人との会話がうまくできなくなる“仮性認知症”になったり、そのまま症状が悪化してアルツハイマー病と診断されるケースも多い」(奥村医師)
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