あなたの健康はお金で買えますか・・・? 糖尿病で腎臓にダメージ…透析に 怖い合併症どう防ぐ?
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糖尿病で腎臓にダメージ…透析に 怖い合併症どう防ぐ?

11月14日の「世界糖尿病デー」を前にした2021年11月11日、バイエル薬品はオンラインセミナー「糖尿病から腎臓を守るためにできること~早期診断と、糖尿病に関連する合併症への理解~」を開催した。最初に国際医療福祉大学教授の小田原雅人さんが糖尿病と腎臓の関係や予防の重要性について解説。その後、糖尿病から透析治療を受けることになったタレントのグレート義太夫さん、管理栄養士の沼津りえさんが参加し、3人によるトークセッションが行われた。当日の内容をお届けする。

■糖尿病になると心筋梗塞、脳卒中も起こしやすく

ご存じの通り、糖尿病とは血液中に含まれるブドウ糖、すなわち血糖値が高くなる代表的な生活習慣病だ。2016年の「国民健康・栄養調査」によると患者数は約1000万人。その手前の予備群も同じくらいいて、合わせると実に2000万人に達する。

血糖値が高くなっても自覚症状は何も感じられないが、高血糖の状態が長年続くと深刻な合併症が起こるようになる。網膜症、腎症、神経障害が3大合併症として知られるが、さらに心筋梗塞、脳卒中、足の動脈硬化(末梢動脈疾患)も起こしやすくなる。

糖尿病は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいことも分かっている。「糖尿病になると免疫力が落ちて感染症のリスクが高くなりますが、新型コロナウイルスに感染した場合、健康だった人に比べて死亡率が約3倍に上がります」と国際医療福祉大学教授の小田原雅人さんは指摘する。

感染症だけではない。糖尿病になると日本人の死因トップ10に入る病気の多くを発症しやすくなる。がんは1.2倍、心疾患や脳卒中は2~4倍、さらに認知症も約2倍リスクが高くなるという。

「心筋梗塞など冠動脈疾患を起こす人の57%は糖尿病で、糖代謝異常のない人はわずか14%しかいなかったという報告もあります。福岡県久山町で行われた大規模な疫学研究から、糖尿病患者はもちろん、予備群のレベルでも心筋梗塞や脳卒中のリスクが明らかに上がることが分かりました」(小田原さん)

■腎臓を守るには血糖値と血圧のコントロールが重要

3大合併症の1つである「糖尿病性腎症」も怖い。

進行すると腎不全になり、定期的に透析治療を受けなければ生きられなくなってしまう。週に何回も医療機関に通い、1回ごとに数時間ずつ奪われる。当然、できる仕事は限られてくるし、長期の海外旅行になど行けない。QOL(生活の質)は大きく下がることだろう。

昭和の時代、透析治療に至る病気はほとんど慢性糸球体腎炎[注1]だった。ところが年々減っていく慢性糸球体腎炎に対し、糖尿病性腎症は右肩上がりで増え続け、約10年前に逆転。2019年末の調査では、約4割を占めるまでになっている(下グラフ)。

透析患者の4割は糖尿病が原因

データ:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2019年12月31日現在)」より原疾患割合の推移© NIKKEI STYLE データ:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2019年12月31日現在)」より原疾患割合の推移

[注1]血液中の老廃物などをろ過する働きを持つ腎臓内の糸球体。慢性糸球体腎炎は、この糸球体の慢性的な炎症によりタンパク尿や血尿が出る疾患の総称。

腎症を発症すると、心筋梗塞や脳卒中も起こしやすくなってしまう。透析を受ければ働けなくなった腎臓の機能はカバーできるが、それでも心筋梗塞や脳卒中のリスクは下がらないという。「心臓と腎臓は密接にリンクしている。腎臓を守ることが心臓を守ることにつながるのです」と小田原さんは話す。

網膜症や腎症など恐ろしい糖尿病の合併症を防ぐには、とにかく血糖値を下げることだ。血糖値の指標の1つであるHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)[注2]は、6.5%以上になると糖尿病の可能性が強く疑われる状態とされる。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2019」によると、血糖値の正常化を目指す観点から6.0%未満が目標とされている。

[注2]赤血球のヘモグロビンのうち、ブドウ糖と結合したものの割合。検査日の数値だけを見る空腹時血糖値と異なり、最近1~3カ月の長期的な血糖値が反映される。特定健診の基準値は5.5%以下。ちなみに、合併症予防のための目標値は7.0%未満だ。

血糖値に加え、血圧を正常に保つことも必要になる。血圧が高いほど腎機能が低下していくことが分かっているからだ。小田原さんによると「腎臓は心臓以上に血圧の影響を受けやすい臓器。腎臓のためには血圧は低ければ低いほどいい」という。

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」によると、正常血圧は上(収縮期血圧)が120mmHg未満で下(拡張期血圧)が80mmHg未満。上が140mmHg以上か下が90mmHg以上になると「高血圧」と診断される。上が130~139mmHg、下が80~89mmHgのグレーゾーンは、高血圧ではないが正常でもない「高値血圧」と呼ばれる[注3]。

[注3]高値血圧と正常血圧の間に位置する収縮期血圧120~129mmHgは「正常高値血圧」と呼ばれる。

腎機能が悪い人や糖尿病の人はこの高値血圧よりも低い血圧を維持しなければならない。つまり、上が130mmHg未満、下が80mmHg未満だ。なお、これは医療機関で測る場合であり、リラックスできる自宅で測る場合はそれぞれ5mmHgずつ低くなる。

脳卒中や心筋梗塞は発症してから後悔しても遅いし、腎機能は脂肪肝などと違っていったん悪化すると元に戻らないという。生活の改善だけで血圧が下がらないようなら、嫌がらずに薬を飲んだほうがいいだろう。

「腎臓を守り、心筋梗塞や脳卒中を防ぐには血糖値と血圧の両方をしっかりコントロールしなければいけません。食生活に気を配る、禁煙、お酒を飲みすぎない、適度な運動習慣など、健康的な生活習慣を持つことが重要です」と小田原さんはアドバイスする。

■糖尿病性腎症から、50歳を前に透析治療をスタート

小田原さんの講演に続き、タレントのグレート義太夫さんと管理栄養士の沼津りえさんが登場し、3人のトークセッションが始まった。

グレート義太夫さんはまだ30代だった1995年に糖尿病と診断された。やがて糖尿病性腎症を発症し、50歳を前にした2007年から透析治療を始めたという。芸能界ならではの不規則な生活に加え、父も糖尿病だったというから遺伝もあったのかもしれない。

もっとも「糖尿病は遺伝的要因もありますが、生活習慣でかなり予防できます。実際、終戦直後の日本には少なかったでしょう」と小田原さん。糖尿病の急増は、食生活の変化と運動不足による肥満の増加が最大の要因だと指摘した。

「肥満は腎臓にもダメージを与え、BMI[注4]の増加で腎機能が低下することが分かっています。大切なのはカロリー制限と運動で体重を減らすこと。体重が5%減るだけで劇的に代謝が改善しますから、まずは5kgやせることを目指して長期にわたってがんばることが大切です」(小田原さん)

[注4]体格指数。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数字で、太っているほど大きくなる。日本肥満学会では22を「標準体重」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上を「肥満」としている。

糖尿病の予防、悪化を防ぐため、食生活でのポイントを沼津さんが語った。

「大切なのはちょっと意識すること。暴飲暴食をやめる、食べる順番を意識する、味の濃いものをやめる、ゆっくり食べる。これらのことを意識するだけでも、毎日の食事を楽しみながら長く続けられると思います。血圧のためには減塩も重要です。最近はおいしい減塩食品も出ていますし、いろいろな味のタレを用意して家族みんなで“味変”(味の変化)を楽しむのもいいでしょう」(沼津さん)

■生活習慣の改善とともに必要な薬はきちんと飲む

義太夫さんも糖尿病と診断されて以来、食事にはそれなりに気を使い、週に1回ウオーキングもするようにしていた。しかし「糖尿病の怖さは痛い、つらい、がないことなんですよ」と振り返る。症状がないのであまり真剣に取り組めず、処方された薬もきちんと飲まないことが増えていく。そして2007年、仕事中に突然倒れ、病院にかつぎ込まれた。「このままでは命にかかわる」と言われ、透析治療を開始したという。現在は週3回、5時間ずつ透析を受けている。

「糖尿病と診断されてからも、もっと生活習慣に注意していれば、透析を始める時期をずっと後ろに持っていけたんじゃないかと後悔しています……。でも透析をしていても、それ以外は普通に暮らせますよ。病院で週15時間受ける透析の間は静かにものを考える時間と決めて、ネガティブにならないようにしています」(義太夫さん)

透析治療を始めたからといって自暴自棄になってはいけない。小田原さんは「治療開始はどの段階でも遅すぎることはない」と強調した。

「透析治療はハンディキャップにはなりますが、それでも普通の生活を送ることは可能です。脳卒中を起こして寝たきりになるとさらにQOLが下がりますから、ほかの合併症を発症しないようにすることが大切。繰り返しますが、腎臓を守るには血糖値と血圧のコントロールが非常に有効です。食生活や生活習慣の改善とともに、必要な薬はきちんと飲んでいただくのがいいと思います」(小田原さん)

腎機能はいったん下がると戻らない。大切な腎臓を守り、末永く人生を楽しむため、血糖値と血圧をしっかりコントロールしていこう。

(文 伊藤和弘、グラフ制作 増田真一)

小田原雅人さん

国際医療福祉大学教授。1980年、東京大学医学部卒業。英オックスフォード大学医学部講師、虎の門病院内分泌代謝科部長、東京医科大学主任教授などを経て現職。東京医科大学特任教授、山王病院内科部長、日本成人病(生活習慣病)学会理事長。専門は糖尿病内分泌代謝。グレート義太夫さん

タレント。1958年、東京都生まれ。たけし軍団の一員として活躍する一方で、ミュージシャンや舞台俳優としても活動する。2007年から糖尿病性腎症による末期腎不全のため透析治療を開始。著書『糖尿だよ、おっ母さん!』(幻冬舎)で透析に至った経緯をつづっている。沼津りえさん

管理栄養士。大手食品メーカーで管理栄養士として勤務後、製菓・製パン専門学校に入学。同時に渋谷の洋食レストランで料理の基礎を学ぶ。料理教室COOK会主宰。企業向けのレシピ開発なども行い、メディアでも精力的に活動している。

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