コレステロール、γ-GTP…「健康基準値は気にする必要ない」説の真意
健康診断の結果表を見ると、検査項目ごとに「基準値」が設定され、「正常」「要経過観察」「要精密検査」など判定が記されている。それを見ながら、「今回は良かった」「ああ、もうダメかも」と一喜一憂する。
だが、基準値の意味を正しく知れば、判定に振り回されることはなくなる。東海大学医学部付属東京病院院長の西崎泰弘医師は、こう解説する。
「『検診』と『健診』の違いを理解していない人が多い。検診は病気の発見、健診はリスクの発見のためにするもの。健診の基準値は正規分布の上下2.5%の人を除外した数値で設定されるため、少々はずれたからといって、即病気になるわけではありません」
血液検査で指摘されがちなのがコレステロールで、高いと脂質異常症を引き起こすとされる。現行の指標はLDL(悪玉)コレステロールが120mg/dl以上なら保健指導、140mg/dl以上なら受診勧奨となる。
だが、長年、健康基準値を研究調査してきた東海大学名誉教授の大櫛陽一氏は、「あまり気にする必要はない数値」だという。
「コレステロールは細胞膜や神経細胞、ホルモン、骨を作るビタミンDなどの原料として身体に必須で、そのコレステロールを細胞に運ぶのがLDLコレステロールです。この値が減ると、これらの必須要素が身体に行き渡らなくなる。60代男性なら180までは問題ない」
コレステロールとセットで、動脈硬化などの原因とされるのが中性脂肪だ。150mg/dl以上で保健指導値とされる。
「数値は、前日の食事内容を強く反映するので、1回の検査の数字で一喜一憂する必要はありません。厳密には10時間くらい空腹にしないといけないのですが、水やお茶以外の飲み物を直前に飲んだだけで基準値からはずれます」(西?医師)
大櫛氏は、中性脂肪よりも別の指標に気をつけるべきだという。
「中性脂肪は一日のなかでも大きく変化します。毎年の検査で250を超えていても、肝機能検査のALT、ASTに異常がなければ、さほど心配する必要はありません」
肝機能の検査についてはγ-GTPを気にしがちだが、重く捉える必要はないという。
「γ-GTPは飲酒量に比例する数値で、基準値の51を超えたならアルコールの摂取量を見直せばいい。肝臓は再生力の強い臓器なので早期の障害なら自ら治癒します。治療法のなかには肝臓の数値に影響を与えるものもあるので、心当たりのある人は医師に相談しましょう」(大櫛氏)
肝臓や胆道に異常がないかを調べる総ビリルビンの数値も、多少の基準値超え程度ならあまり気にしない方がいいという。「総ビリルビンの基準値は厳しすぎて、日本人の1~2割は基準値から外れてしまう。指標として見直しが必要ではないか」(西崎医師)
糖尿病の診断基準となる血糖値については、日本糖尿病学会が空腹時血糖値は110mg/dl未満、Hb(ヘモグロビン)A1cは5.5%以下を正常値とし、健診の基準値にもなっている。 HbA1cが基準値を超えていた場合、「軽く考えてはいけない」という。
「HbA1cだけが高い場合は食後高血糖になっていて、糖尿病の前段階が疑われます。この段階で糖質制限など食生活を見直せば改善を見込めます」(大櫛氏)
一方、空腹時血糖値については数値だけに囚われてはいけない。
「空腹時血糖値については、採血前の行動の影響を受け、6時間前から影響を受けると考えるといいでしょう。結果が悪くても数値だけで判断するのではなく、食事や運動量なども振り返って、数値を受け止めないといけません」(西崎医師)※週刊ポスト2022年1月1・7日号
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