“ぎっくり腰”になる人…共通している「誤った」体の使い方
突然腰に鋭い痛み…「ぎっくり腰」になってしまうと日常生活に支障をきたし、「なぜこんなことに」と原因を探っても自分ではなかなか思い出せないことがあります。
今回は、まほろば鍼灸整骨院院長の山田真氏が「ぎっくり腰」になりやすい人の体のクセとその対策について解説します。
目次
- 「前屈」でわかる体の歪み
- ぎっくり腰予防には「まずしゃがむ」
- 子供を抱き上げる際ぎっくり腰になってしまったAさんの例
「前屈」でわかる体の歪み
私は、患者さんを診る際必ず体の動きをチェックします。いわゆる「動診」です。
動診をすることで、体の誤った使い方や歪みがわかるだけでなく、日常生活の習慣や体の癖が見えてくるからです。
患者さんの動診をしているとき、多くの方に見られる気になる動きがあります。
それは、「前屈」です。いわゆる前にかがむ動作で、日常生活でも頻繁に行う動作のひとつです。患者さんの多くが「腰から」前屈をします。「何がいけないの?」と不思議に思うかもしれませんが、じつはこれが誤った体の使い方で、腰に負担をかけているのです。
これには背骨の構造が大きく関与しています。
背骨は、頚椎(けいつい)が7個、胸椎(きょうつい)が12個、腰椎(ようつい)が5個と細かく分かれています。つまり、背骨は細かく連続して動けるように構造されているのです。
前屈をする際の理想的な動きは、まず頭から前方に倒し、それから背中の上部、中部、下部と少しずつ倒していき、最後に腰、股関節を曲げていくという動きです。こうすることで、各背骨の関節がそれぞれ円滑に動き、その周囲の筋肉も無理なく動くことができます。
これができる方の前屈の姿勢は、背中全体が綺麗な曲線を描いて丸くなっています。これは、すべての背骨の骨がそれぞれムラなく少しずつ動いている証拠です。
しかし、腰から曲げて前屈する方は、腰周辺のそれぞれの関節をひとつずつ動かすのではなく体を腰から急激に曲げるため、動き過ぎている関節と動いていない関節のムラが激しくなっています。
この場合、前屈の姿勢は腰周辺の一部が大きく曲がり、それ以外の箇所は平らな状態です。このようにムラのある状態ですと、当然その周辺の筋肉にも緊張のムラができてしまいます。
金属を例にすると、アルミなどの薄い金属の板を1ヵ所だけ折り目をつけて曲げ、繰り返し何回も同じ箇所で曲げていくと金属疲労を起こし、やがて折り目の箇所で折れてしまいます。
人の体も同様です。普段腰から急激に曲げるように前屈をし続けると、やがて腰に負担がかかりひどい腰痛を起こしてしまうのです。
このような事態にならないためにも、普段から前屈をする際は、頭から曲げていき背中の上部から順に少しずつ曲げていき、最後に腰、股関節という具合に動かすように意識しましょう。そうすることで腰だけに負担が生じることが無くなり、関節、筋肉共にムラなく使えるようになります。
ぎっくり腰予防には「まずしゃがむ」
下にある荷物を持ち上げようとするときの動きにも注意が必要です。誤った体の使い方で、ぎっくり腰になる人が非常に多いのです。
下にある荷物を持ち上げようとするときにも前屈の動作が関与します。
ぎっくり腰になる方は、腰を曲げた状態で前屈をして、荷物を一気に持ち上げようとします。腰に負担がかかった状態で、さらに荷物の重さが腰にかかるため、腰周辺の筋肉が荷物の重さを支えられなくなり、ぎっくり腰を引き起こしてしまうのです。
腰の負担を軽くするためには、まずしゃがみましょう。しゃがんで下半身の強い筋肉を使って荷物を持ち上げるようにしましょう。そうすることで腰の負担はだいぶ軽減されます。
つい横着をして、しゃがまずに荷物を持ってぎっくり腰になってしまう人が非常に多いので、皆さんも十分気をつけてください。
子供を抱き上げる際ぎっくり腰になってしまったAさんの例
似たような状況でぎっくり腰になるケースは、小さなお子さんをもつお母さんによくみられます。
当院にも最近、このケースで30代の女性患者Aさんが来院されました。
Aさんにぎっくり腰の原因を聞くと、「お子さんを自転車の後部座席に乗せようと抱き上げた瞬間に腰に激痛が走った」とのこと。お子さんを抱き上げた状況を詳しく聞くと、「しゃがまずに中腰の状態で抱き上げた」ということでした。
ぎっくり腰を何度も経験している人は、日頃の体の使い方が深く関係しています。
荷物なのか、お子さんなのかという違いはありますが、どちらの場合も腰の筋肉だけを使って重さを持ち上げようとしたために腰に負担がかかり、ぎっくり腰が起きています。
重いものを持ち上げるときは、必ずいったんしゃがんで下半身の強い筋肉を利用してから持ち上げるようにしましょう。
以上のように、普段のなに気ない体の使い方で不調をまねくことがあります。体の構造を理解したうえで、なるべく体に負担がかからないよう意識しましょう。
山田 真(やまだ・まこと)