コロナ禍の花粉症は、粘膜を触ることでコロナ感染リスクも。舌下免疫療法からワセリンまで、幅広い対策を
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コロナ禍の花粉対策は早めが肝心
日本気象協会の発表によると、今年のスギ花粉の飛散量は、東日本が昨年よりやや多めで、西日本がやや少なめとの予想です。
「かつては、花粉が多く飛散した翌年はその量が少なくなる《隔年増減現象》が見られましたが、異常気象の影響からか近年は多めの傾向が続いています。それでも昨年は、花粉症の新規発症者数は減少し、また症状も軽く済んだ人が少なくありませんでした」と解説するのは、国際医療福祉大学の岡野光博先生です。その要因として、コロナ対策のマスク習慣が功を奏していると指摘します。
「花粉の大きさは30から50マイクロメートル。不織布のマスクであれば、十分からめとってくれます」(岡野先生。以下同)
とはいえ、マスクだけで花粉を完全にシャットアウトできるわけではないので、治療は不要と早合点するのは禁物だといいます。
「コロナ禍では、人前でくしゃみをしたり、鼻をかんだりしていると白い目で見られることもあり、昨年は早めに来院して治療を開始する人も多くいました」
さらに、目をこすったり鼻をかむなどで顔を触る機会が増えると、新型コロナウイルス感染のリスクを高めることにもなるので、症状が出る前から対策することが肝心。
「一度症状が出てしまうと、鼻の粘膜がどんどん過敏になり悪化していきます。関東の場合は、例年2月中旬あたりから花粉が飛び始めていますから、早めに治療を開始させておきたいところです」
根治をめざす舌下免疫療法とは?
花粉症の根治療法として注目されているのが、舌下免疫療法です。1日1回、薬剤を飴のように舐め、アレルゲンを少しずつ体に入れていくことで、アレルギー症状が起こらないように治療していく方法です。現在、治療が行われているのは、スギとダニによるアレルギーのみですが、保険も適用されます。
「3~5年にわたる治療が必要ですが、治療を行った8~9割の人に症状が軽くなる、症状が出なくなるなどの効果が認められています」
治療の開始は、花粉の影響が少ない7~8月ごろに始めるのが適切だそうです。
くしゃみ・鼻水には、抗ヒスタミン薬が有効
そもそもどうして、花粉によって、くしゃみや鼻水といった症状が起こるのでしょうか?
「アレルギーを持つ人の体の中には、特定のアレルゲンに対してその異物を排除しようと働くIgE抗体があります。花粉が入ってくると、そのIgE抗体が存在する粘膜の細胞からヒスタミンという化学物質が分泌され、神経を刺激することで、くしゃみ・鼻水などの症状を引き起こすのです。治療には抗ヒスタミン薬が用いられ、ヒスタミンが神経に作用する部分をブロックすることで、症状を出にくくします」
前もって服用することで、症状が出るのを遅らせ、最盛期の症状を軽くすることができるそう。これまでは内服薬が一般的でしたが、近年は貼り薬も登場しています。
「胸や腕などに貼ります。内服薬と違って消化吸収の影響を受けないため、安定して薬効が持続するという利点があるのです」
また、鼻づまりは、くしゃみや鼻水とは異なり、鼻粘膜の細胞から分泌されるロイコトリエンという化学物質によって血管が広がることで起こると岡野先生。鼻づまりは、抗ロイコトリエン薬などで症状を緩和します。
そのほかにも、目や皮膚のかゆみ、熱っぽいといった症状が出ることも。症状の出方や重症度に応じて、耳鼻科などで自分に合った薬を処方してもらうと安心です。
さらに岡野先生は、簡単にできる花粉対策として、ワセリンを鼻の穴の入り口に塗る鼻バリアが効果的と勧めます。
「花粉によるアレルギー症状は、花粉の外側についているアレルギー物質と、鼻の粘膜の水分にふれて花粉が割れることで内部から出てくる別のアレルギー物質によって起こるのです。ベタベタ状のワセリンが花粉をキャッチするとともに、花粉が割れるのを防ぐ効果もあり、花粉の攻撃力をダブルで弱めてくれます」
外出時は、この鼻バリアとマスクの合わせ技を習慣にしたいもの。こうして花粉をなるべく体内に取り込まないようにすれば、花粉症になっていない人が新たに発症しないためにも有効です。