中年期の肥満が高齢期の疾患リスクや寿命の短縮と関連
中年期の肥満が、高齢期に入ってからのさまざまな疾患のリスクの高さや、寿命が短いことと有意に関連していることを示す論文が、「JAMA Network Open」に3月15日掲載された。筆頭著者である米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSadiya Khan氏は、「肥満は無視してはならない深刻な健康への影響をもたらす」と述べている。
病的肥満と呼ばれることもある、BMI40以上の高度肥満が健康上の脅威であることは、比較的理解されやすい。Khan氏は、「それら高度肥満症患者は、100ポンド(約45kg)以上も太りすぎていて、高血圧や2型糖尿病などを併発していることが少なくない。
減量のために薬剤や代謝改善手術(減量手術)などの、生活習慣改善以外の医学的治療をしばしば必要とする」と解説する。ところが、今回の研究の結果、それほど高度な肥満でなくとも、高齢期に入ってからの健康を脅かすことが明らかになった。
Khan氏らの研究には、米国シカゴの心臓協会が行った前向きコホート研究のデータが用いられた。研究参加者は1967~1973年に登録された2万9,621人。
登録時の平均年齢は40±12歳で、57.1%が男性、9.1%が黒人であり、BMIは46.0%が正常(18.5~25.0未満)、39.6%が過体重(25.0~30.0未満。国内での分類では1度の肥満)、11.9%がクラスI~IIの肥満(30.0~40.0未満。同2~3度の肥満)。
1985~2015年まで追跡し、死亡年齢、65歳以降での疾患罹患状況などを比較検討した結果、以下に示すように、BMIカテゴリーによる違いが認められた。
まず、死亡年齢は、正常BMI群は82.3歳(95%信頼区間82.1~82.5歳)、過体重群は82.1歳(同81.9~82.2)で有意差がなかった。それに対してクラスI~IIの肥満群は80.8歳(同80.5~81.1)であり、前二者よりも有意に短かった。
続いて疾患罹患状況については、Gagne複合併存疾患スコア(Gagneスコア)という-2~26点で評価する指標で把握し、スコア1以上の該当者数を比較。その結果、正常BMI群0.38%、過体重群0.41%、クラスI~II肥満群0.43%の順に、該当者数が増加した。なお、Gagneスコアが1の場合、1年以内の死亡率が5.1%(4.9~5.4)であることが、過去の研究で示されている。
この結果に対して、本研究には関与していない米ペニントン生物医学研究センターのVance Albaugh氏は、「驚くべきことではなく、中年期の生活習慣の重要性を示した結果と言える」としている。また同氏は、「この研究結果は、体重を減らして『肥満』のカテゴリーから脱却することのメリットを強調するものでもある」と付け加えている。
とは言え、減量は簡単ではない。Albaugh氏も、「人の体は体重を減らすよりも増やす方向に向かいやすく、たとえ摂取カロリーを減らしたとしても、体はその少ない摂取カロリーに対応するように変化してしまう。さらに、人は一般的に歳をとるにつれて、体重が増えるものだ」と解説し、多くの人が減量に困難を感じていることに理解を示す。
ただし同氏は、「体重が大きく減らないにしても、しっかり運動を続けることで、健康上のメリットを得ることができる」とし、「達成可能で持続可能な小さな変化から始めると良い」とアドバイスする。例えば甘味飲料ではなく、ふつうの水を飲むようにすること、エレベーターではなく階段を使用すること、近所を毎日散歩するといったことを提案している。
他方、Khan氏は、「生活習慣を変えるのに、早すぎたり遅すぎたりすることは、決してない」と強調。また同氏は、「肥満を個人の問題と考えるべきではない」と述べ、低所得者が健康的な食品にアクセスしやすい環境を整えたり、運動のための緑地を整備するといった社会的な政策の必要性を訴えている。(HealthDay News 2022年3月21日)