あなたの健康はお金で買えますか・・・? ドイツ発祥の健康ウオーク 適度な負荷で足腰を鍛える
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ドイツ発祥の健康ウオーク 適度な負荷で足腰を鍛える

ドイツの気候性地形療法を基にした健康ウオーキングを体験する参加者たち© NIKKEI STYLE ドイツの気候性地形療法を基にした健康ウオーキングを体験する参加者たちコロナ禍の影響でおうちにこもりがち。おなか回りや足腰の衰え、メンタル面の不調などが心配になります。その対応策として注目されているのが、ウオーキング。空いた時間に散歩に出かけたり、通勤のときに少し遠回りをしてみたり、歩くことで運動不足の解消やストレス発散に役立てようという人も増えてきました。いま、各地の自治体で住民の健康づくりのために採用が始まっているのが、ドイツ発祥の新しいウオーキングメソッドの「クアオルト健康ウオーキング」です。どんなスタイルなのか、日本で普及に取り組む日本クアオルト研究所代表の大城孝幸氏に聞きました。

「クアオルト」とは、ドイツ語で「療養地・健康保養地」を意味します。ドイツの気候を活用するクアオルトでは、「気候性地形療法」と呼ばれる、自然を利用した運動療法が行われています。医科学的なエビデンスに裏付けられた療法で、心筋梗塞や狭心症のリハビリ、高血圧、骨粗しょう症の治療・予防に用いられ、ドイツでは医師の処方により公的な医療保険にも適用されています。この運動療法を取り入れ、日本仕様にアレンジしたのが「クアオルト健康ウオーキング」です。

■ドイツ人は呼吸するのと同じぐらいよく歩く

ドイツは、1年のうち約150日も休みがある休暇大国です。しかも有給休暇の取得率は、ほぼ100%。ドイツ人の1年間の平均労働時間は1386時間、日本人が1644時間と、ドイツのほうが約260時間も労働時間が少ないのです。驚くべきことは、日本の1時間当たりの労働生産性が49.5ドルに対して、ドイツは76.0ドルと高いことです(OECD2021年統計データ)。休みが多くても生産性は高いのです。これは、きちんと休んで心身をいたわり、働くときには集中して働くという考え方がドイツには根付いているからだと私は考えています。ドイツでは「歩くことは呼吸と同じ」とよく言われます。休みの日には多くの人がドイツのクアオルトで、健康ウオーキングを楽しんでいます。

■運動強度55~60%を目標に 負荷をかけながら自然の中を歩く

クアオルト健康ウオーキングは、自分に合った運動強度(体への負荷)を心拍数で把握しながら歩くのがポイントです。専用のガイドが同行し、各人の年齢や体力を考慮しながら、アップダウンのあるウオーキングコースを歩いていきます。理想の運動強度は55~60%で、これは体感的にややきついぐらいの強度になります。歩数や消費カロリーも大事ですが、事故がないように適度な負荷のかかる運動強度で無理なく歩くことが大切だからです。

コースの途中で心拍数や体温を計測しながら専門ガイドが参加者をサポートする(写真左はガイド資格を取得した2019ミス日本みどりの女神の藤本麗華さん)。© NIKKEI STYLE コースの途中で心拍数や体温を計測しながら専門ガイドが参加者をサポートする(写真左はガイド資格を取得した2019ミス日本みどりの女神の藤本麗華さん)。

もう一つのポイントは、「冷たくさらさら」です。気候の要素(冷気と風)を活用して、運動中の汗を蒸発させ少し冷たい感覚で歩くことで、倍近い運動効果(持久力)が期待できるというドイツでのエビデンスに基づいた手法を取り入れています。 このウオーキングでは、森林や山などの豊かな自然のなかに整備された専門コースを歩くため、自然環境の変化に伴い体温や発汗の調節が行われます。結果として血管の収縮と拡張や、血圧、脈拍を調整する自律神経系のトレーニングになります。

また、専門ガイドと共にグループで歩くため、そこで交わされる様々な会話が、メンタルヘルスの改善につながるという検証もされています。2021年に日本循環器学会でエビデンスが発表され、英文誌「Circulation Reports(サーキュレーション・レポート)」に研究論文が掲載されました。

東京都の医療従事者の約16万人が加入する東京都医業健康保険組合で、クアオルト健康ウオーキングが採用されました。新型コロナウイルスと最前線で闘う医療従事者に対し、コロナ禍での免疫力維持や心と体のリフレッシュが期待できることを評価されたことで、自治体や企業の健康経営担当者からの問い合わせも増えています。

コロナ禍の今こそ、森の中で太陽の光を浴びて、ウオーキングを日課にし、適度な運動で免疫力の維持とともに、ストレスとも上手に向き合ってみてはいかがでしょうか。

■健康ウオーキングを心臓疾患のリハビリに活用

私が「クアオルト健康ウオーキング」に出合ったのは2013年11月の山形県上山市。当時の私は過度のストレスと生活習慣の乱れから、心臓手術を2度も受けていました。「健康」は失って初めて気づく概念であり、人生は有限で不完全だと思い知らされました。心臓手術をする以前は運動習慣がなかった私が、寿命を延ばしてこられたのは、このウオーキングのおかげだとも言えます。

医療との連携が進み、岐阜市では岐阜市民病院が中心になって実際にこのウオーキングが心臓疾患のリハビリに活用され始めました。心臓疾患がある私にとって、とても感慨深い出来事でした。

クアオルト健康ウオーキング

先進地・山形県上山市をはじめ、中枢中核都市の岐阜市、愛知県岡崎市、SDGs未来都市の三重県志摩市、「敬老の日」発祥の地といわれている兵庫県多可町、埼玉県所沢市など、20の自治体が採用(2022年3月現在)。クアオルト健康ウオーキングを導入し、健康寿命延伸、交流人口拡大に取り組む。さらに年内に新たに6つの自治体が採用の予定。 大城孝幸

大城孝幸氏© NIKKEI STYLE 大城孝幸氏日本クアオルト研究所代表取締役。2度の心臓手術の後に、ドイツ発祥のクアオルト健康ウオーキングにめぐり合う。これまでに100を超える自治体を訪問して、クアオルト健康ウオーキングの普及に努める。2016年からクアオルト健康ウオーキングアワードを主催・運営(特別協賛 太陽生命保険)。著書に「賢く歩いて、人、企業、地域が変わる クアオルト・リテラシー」(日経BP、2021)がある。ドイツ気候療法士、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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