iPS細胞から作った角膜シート移植、ほぼ失明の患者が視力回復…大阪大
大阪大は4日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った角膜細胞のシートを「角膜上皮幹細胞疲弊症」と呼ばれる重い目の病気の患者に移植する臨床研究が完了したと発表した。有効性を評価できた3人全員で視力が一定程度回復したほか、安全性にも問題がみられなかった。2025年度の実用化を目指すという。
阪大の西田幸二教授(眼科学)らは、京都大から提供を受けたiPS細胞を角膜の細胞に変化させ、円形のシート(直径約3・5センチ、厚さ0・05ミリ)に加工。重症の角膜上皮幹細胞疲弊症で失明に近い状態になった30~70歳代の男女4人を対象に、19年7月からそれぞれ片方の目に移植し、1年ずつ経過を観察した。
その結果、白内障を併発して評価が難しかった1人を除く3人で、眼鏡などを装着した矯正視力が改善し、最も効果が大きかった患者では0・15が0・7になった。一方で、移植に伴う拒絶反応や、iPS細胞の腫瘍化は4人全員で確認されなかったという。
現在は脳死者らから提供された角膜の移植が行われるが、拒絶反応で再び視力が落ちることが多く、患者の口の粘膜で作ったシートを移植する新しい治療法も透明度が低い課題があった。
1例目の移植を受けた40歳代の女性は読売新聞の取材に「移植前は家事をしている際に手元が見えにくく、ストレスが大きかった。今は移植を受けて2年以上たつが、裸眼でも見えているので、生活は大きく変わった」と話した。
阪大発の医療新興企業「レイメイ」(大阪市)は25年度の実用化に向け、国の承認を目指す治験を23年度にも実施する考えだ。
山上聡・日本大教授(眼科学)の話「この病気に対する治療法では、かなり良い成績と言える。ただ、角膜シートは人の角膜と全く同じではないので、治験では安全性と有効性をより長期的に確認してほしい」
◆角膜上皮幹細胞疲弊症=3層構造の角膜で最も外側にある「角膜上皮」が感染症や薬の副作用で傷つき、不透明になる病気。視力が低下し、最悪の場合は失明することもある。
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