新学期を迎え、一学年成長したわが子の変化に、戸惑う親も多いのではないでしょうか。

「うちの子、もしかして反抗期!?」と悩む前に、親側が準備できる心構えとは?

児童の自主性・自立性を引き出す授業で定評のある小学校教諭・沼田晶弘氏の著書『もう「反抗期」で悩まない! 親も子どももラクになる“ぬまっち流”思考法』より、「反抗期」をネガティブにとらえることの弊害を解説します。

「主張できない日本人」を作ってしまう「反抗期」

 主張ができない。

 自分の意見を言うことができない。

 議論ができない。

 世界と比べて、日本人はそう評されます。同じ日本人のなかでも、

 「最近の若い人は……」

 といった枕詞付きで、同じような苦言を呈する人もいますね。 

 主張できないのは、子どものとき、主張させてもらえなかったからです。

 自己主張が芽生えたと同時に、「反抗期」というレッテルを貼られ、主張することを認められなかったのです。

 しかし、「反抗期」など、本当はありません。

 「反抗期」は「自己主張期」。

 「反抗」と親が受け取ってしまいがちな子どもの言葉や行動は、どれも「自己主張」によるものです。子どもたちは、親に反抗したいのではなく、

 「自分の意見を聞いてもらいたい」

 「認めてもらいたい」

 という思いを、根底にもっています。

 「うるさい」

 「うざい」

 といった、「反抗期」認定された子どもが発しがちな言葉の裏には、子どもなりの主張があります。しかし、その主張は大人たちに見過ごされがちです。「反抗」とみなし、抑え付けられることすらあります。子どもたちは、主張することを許さない大人たちとのバトルを経て、

 「自分の意見を主張するのは、よくないことなんだ」

 と学ぶのです。もしくは、主張をことごとくはねのけられ、押し込められるという経験を通して、

 「主張をしても何も変わらない。面倒だ」

 と、諦めてしまう子もいるはずです。

 こうして、子ども時代に主張する機会を奪われた人に対して、「大人になったのだから主張しろ!」と求めても、できるわけがありません。

 裏を返せば、「反抗期」という言葉を世の中から消し去って、「自己主張期」に変えてしまえば、子どもは思うままに自己主張できるようになり、話は大きく変わるはずなのです。

反抗期をネガティブなものにする「期待の押し付け」

 長年、小学校の教師として仕事をするなかで、1年生から6年生まで幅広い年代の子どもたちと接してきました。これからも、多くの子どもたちと日々を過ごしていくでしょう。同時に、保護者の方と接する機会もよくあります。

 親は、子どもに期待するものです。

 何を当たり前のことを、と思われるかもしれません。ある教育機関が行った調査によると、0歳から6歳までのお子さんを育てている保護者の方たちの実に約8割が、「『うちの子、天才かも!』と思ったことがある」

 と答えたそうですから、親が子どもに、

 「こんな人に育ってほしい」

 「こんな活躍をしてほしい」

 と、ついつい期待するのは、親にとって当然のことなのでしょう。

 それが必ずしも悪いとは思いません。でも、親の子に対する「こんな人に育ってほしい」という期待を、子どもに無理やり押し付けてしまったら、やはりよくないことだと思います。

 子どもを型にはめすぎて、いいことはありません。

 ところで、「期待を押し付ける」とは、具体的にどうすることだと思いますか?

 「自分の仕事を継いでほしいから、必ず資格を取得させなければいけない」

 と、教育熱心になることでしょうか。

 「果たせなかった自分の夢を、子どもに受け継いでほしい」

 と、特定の分野にこだわって教え込むことでしょうか。

 少数派かもしれませんが、親も子とともに命がけで1つの物事に取り組むことで、お子さんの才能が開花し、いい結果を生み出すことはあるでしょう。しかし、親の期待が子の希望に沿っていなかったり、子の個性や才能からかけ離れた期待であったりすれば、次第に子どもはつらくなってくるはずです。

 子どもが苦しむのであれば、「期待の押し付け」であると言わざるを得ません。

 もっとも、これは極端な例です。

 なぜなら「期待の押し付け」は、お子さんのいるご家庭のほとんどで、ありふれた日常のなかに、かなりの頻度で、転がっているものだからです。

つい「早く!」と言ってしまう心理

 「早くしなさい!」

 と、お子さんを叱ったこと、親ならば一度ならずあるはずです。あと5分で家を出なければ学校の始業時間に間に合わないのに、お子さんがのろのろ身支度していれば、そう言いたくなるのも当然です。気持ちはよくわかります。ボクもタンニンとして言うことがあります(笑)。

 他にも、

 「早くお風呂に入りなさい!」

 「早く宿題やりなさい!」

 「明日も学校なんだから、早く寝なさい!」

 なんて言葉をたたみかけてしまうこともありますよね。

 もしかしたら似たようなことを、昨日も、今日の朝にも、何ならこの1週間毎日、お子さんに言っていませんか?

 それ、まさに「期待の押し付け」です。

 「早く身支度できる子になってほしい」

 「お風呂の時間がきたら、すぐに入れる子になってほしい」

 「自分から宿題ができる子になってほしい」

 という、親から子への「期待の押し付け」なのです。