あなたの健康はお金で買えますか・・・? 「がん薬物療法」後悔しないために知っておきたいの3つの目的 根治以外は?
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「がん薬物療法」後悔しないために知っておきたいの3つの目的 根治以外は?

がんの3大療法の一つである薬物療法は、さまざまな新薬が登場し近年急速に進歩している。しかし、がんを切り取って根治を目指す手術と違って、がん薬物療法の目的は複数ある。その目的を理解しないで治療を受けると「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねない。好評発売中の週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』から「がん薬物療法」の解説記事を一部抜粋して紹介する。

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 がんの薬物療法は、手術、放射線治療と並ぶもう一つの治療方法だ。手術や放射線はがんそのものにアプローチする局所療法だが、薬物療法は点滴や注射、飲み薬などを使って見えないがん細胞まで攻撃する全身療法だ。がんに使われる薬剤すべてを「抗がん剤」と呼ぶ場合もあるが、本誌では分子標的薬などの新しい薬剤と区別して、従来型の抗がん剤を「抗がん剤」と呼ぶ。

■薬物療法の目的は根治だけではない

 がんの薬物療法の目的は大きくわけて三つある。

 一つめは、薬だけで根治を目指す場合だ。急性白血病や悪性リンパ腫などの血液がんや精巣腫瘍は、薬単体での根治が期待されている。小細胞肺がんのように薬が効きやすいものもある。

 一方で胃がんや大腸がん、乳がんなど多くの固形がん(臓器や組織にできるかたまりのがん)は薬だけで根治を目指すのは難しい。がんが局所にとどまっている場合は手術や放射線治療が第1選択肢となるが、ここに薬物療法を組み合わせることで根治の可能性を高めることができる。これが二つめの目的だ。

 手術後に薬を使う「術後化学療法」は、おもに再発を防ぐ目的で使われる。手術でがんを取り切ったとしても、肉眼で確認できないがん細胞が残っている可能性は否定できない。薬を使うことで見えないがん細胞を攻撃すれば、再発の確率を下げることができる。

 手術前に使う「術前化学療法」は、薬でがんを小さくしてから切除することがおもな目的だ。切除部分が縮小すれば、正常な臓器を多く残すことができる。手術が難しいとされる大きながんも、縮小することで手術可能になることもある。

 放射線と薬物を併用する「化学放射線療法」は、薬の力によって放射線治療の効果が高まることが期待されている。このように手術、放射線、薬物の三つの治療をそれぞれ組み合わせておこなうことが近年増えている。

 三つめの目的は、延命とQOL(生活の質)の向上だ。進行したがんや手術後の再発などの場合、治癒は難しくなる。局所療法ができなくなった場合に頼れるのも薬物療法だ。薬を使わない場合に比べて数カ月から数年の延命が期待できる。がんが一時的にでも縮小すれば、体調の悪化を抑えることも可能だ。

■分子標的薬の登場でがん薬物治療が変わった

 がんの薬はなぜ効くのだろうか。そのメカニズムは薬剤の性質によって違う。現在使われている薬剤は四つの種類にわけられる。

 従来の抗がん剤は「細胞障害性抗がん剤」とも言われる。がん細胞は正常細胞よりも分裂・増殖のスピードが速いので、その分裂を妨害することで増殖を抑える。しかし毛根や皮膚、消化管の上皮など分裂・増殖のスピードが速い正常細胞にもダメージを与えるため、脱毛や嘔吐、下痢、皮疹などの副作用が高確率で起こる。

 ホルモン剤は、乳がんや前立腺がんなどホルモンの影響を受ける一部のがんに使われる。ホルモン分泌やホルモンの活動を薬で阻害することで、がん細胞の増殖を抑える効果がある。

 この二つに加え、2000年前後からがんの薬物療法に新しい潮流が生まれた。分子標的薬の登場だ。がんの増殖にかかわるたんぱく質の遺伝子変異や、がん細胞に栄養を運ぶ血管の新生にかかわるたんぱく質など、特定の分子を「標的」にして攻撃する。正常組織に直接攻撃をしかけることがなく、治療の効率もよい。だが、すべての患者に使えるわけではない。「標的」となる遺伝子の変異(ドライバー遺伝子)やたんぱく質の発現を持つ患者だけに効果が表れるのが大きな特徴だ。

 たとえば肺がんに使われるゲフィチニブ(一般名イレッサ)という薬は、02年から日本で使われるようになった分子標的薬だ。当時はすべての肺がん患者に使われたが、劇的に効果がある人とそうでない人がいた。調べると、がん細胞の「EGFR遺伝子」に変異がある人だけに効果があるとわかった。北里大学病院の佐々木治一郎医師はこう話す。

「肺がんの薬物療法にとってターニングポイントでした。それ以降は治療戦略を練るうえで、まずバイオマーカーでたんぱく質や遺伝子などの検査をおこない、『標的』の有無を調べるようになりました。標的をもたないがんの場合には、従来通りの細胞障害性抗がん剤を使用し、標的を持つ場合には分子標的薬を使うことが一般的です。これは肺がんだけでなく、多くの固形がんでおこなわれています」

■人のからだが本来もつ力を利用して治す「免疫療法」

 そして現在、もっとも注目されているのは免疫チェックポイント阻害薬だ。18年に本庶佑氏がノーベル医学生理学賞を受賞したことで一躍有名になったが、国内では14年に「ニボルマブ(商品名オプジーボ)」が保険で承認されたのを皮切りに、22年1月現在で6種類が国内で承認されている。

 免疫チェックポイント阻害薬は分子標的薬の一種だが、その働きは独特だ。がんを直接攻撃するのではなく、人のからだが持っている病気とたたかう力(免疫)を利用している。

 免疫とは、からだに侵入してきた病原菌やウイルスを攻撃し撃退するしくみだ。体内に発生したがんには、白血球の中にあるT細胞という免疫細胞が攻撃する。しかしがん細胞はT細胞に「攻撃終了!」という指令を送ることができるため、攻撃にブレーキがかかってしまうのだ。

 免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞からの「攻撃終了」のサインを妨害する薬だ。T細胞による攻撃にブレーキがかからなくなり、がん細胞を排除することができる。このように、免疫の力を利用した治療法を「免疫療法」とも言う。

 画期的な治療法だが、免疫チェックポイント阻害薬はすべてのがんに使えるわけではない。効果が認められ、保険診療で受けられるのは非小細胞肺がんやメラノーマ(悪性黒色腫)など数種類のがんに限定されているうえ、その中でも細かい条件がある。条件がそろえば、単独でも、抗がん剤や分子標的薬と併用しても使うことができる。最近ではほかの分子標的薬と同様に、遺伝子検査やたんぱく質発現検査をおこない、「標的」がある場合に使うこともある。

「免疫チェックポイント阻害薬には副作用がないと思われがちですが、そんなことはありません。免疫を活性化する薬なので、免疫が過剰に活性化されて正常細胞を攻撃してしまうこともあります。とはいえ従来の抗がん剤に比べて副作用の発生率は低く、重篤な副作用の発生率は2~4割程度。ただし副作用の幅は広く、副作用対策として循環器内科や膠原病内科など他の診療科と連携が必要になることもあります」(佐々木医師)

■薬が使える患者と使えない患者がいる

 がんの種類にもよるが、薬物療法に使える薬剤は年々増加している。しかし患者一人ひとりの選択肢が広がったわけではないと佐々木医師は言う。

「分子標的薬の場合、ドライバー遺伝子の種類や組み合わせによって使える薬はほぼ決まります。ドライバー遺伝子がない場合には免疫チェックポイント阻害薬の適応かを調べ、適応でない場合には従来型の抗がん剤の中から最適なものを選びます。治療薬が多いとはいえ、一人の患者さんが使える薬は限られます。だからこそ『分子標的薬が使えない』と落胆する人もいますが、『あなたに最適なものは従来の抗がん剤です。いっしょにがんばりましょう』とお伝えします」

 多くの薬剤の中でどの薬を選択するのかは、各がんの『診療ガイドライン』に推奨されている。東京大学医科学研究所病院の朴成和医師はこう説明する。

「最新の標準治療は、過去の標準治療とタイトルマッチのような勝負をして勝ち抜いたものですから、一番よいと考えられている治療方法です。標準治療はどの病院でも受けることができるはずですが、実際には患者さんの年齢や仕事、生活のスタイルを考慮し、副作用についても考えていくと、標準治療をそのままやればいいということにならない場合もあります。十分な説明と臨機応変な対応力、治療開始後の修正力のようなものが医師やスタッフにどれだけあるかが病院の力と言えるかもしれません」

(文・神素子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

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