あなたの健康はお金で買えますか・・・? 高血圧には薬だけでは不十分 生活改善の有無で死亡率に大きな差
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高血圧には薬だけでは不十分 生活改善の有無で死亡率に大きな差

高血圧と診断され、血圧を下げる薬(降圧薬)を飲んでいても、「禁煙」「運動」といった生活改善に取り組まなければ、死亡リスクの減少などに十分な効果が得られないことが、中国で行われた研究[注1]で明らかになりました。

■降圧薬を飲んでいても健康的な生活習慣は必須?

高血圧は、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患の発症や、これによる死亡と強力に関係しています。加えて、一部のがんのリスク上昇にも関係することが示されています。

高血圧と診断され、生活改善を心がけても血圧が下がらない患者には、降圧薬が処方されます。高血圧の自己管理において重要なのは、降圧薬を指示された通り服用することと生活改善の2つで、健康的な生活習慣を継続すれば血管の健康状態は良好になり、心血管疾患のリスクは低下することが知られています。しかし、中には降圧薬を飲んでいることで安心してしまい、生活改善に積極的に取り組まない患者も存在します。

今回、中国華中科技大学のQi Lu氏らは、中国の高血圧患者を、「降圧薬の使用の有無」と、「健康的な生活習慣を実践しているかどうか」に基づいて分類し、あらゆる原因による死亡(総死亡)と、心血管疾患による死亡、がんによる死亡のリスクを比較することにしました。

分析対象にしたのは、中国の自動車メーカーの退職者を2008年から登録しているDongfeng-Tongjiコホートの参加者です。今回は、2018年までのデータを利用しました。

生活習慣として評価したのは、高血圧の予防と治療のための最新のガイドラインが重要視している、BMI、喫煙歴、食習慣、身体活動、睡眠時間の5つの要因です。それぞれを、好ましくない習慣または数値を意味するスコア0から、好ましい習慣または数値であることを意味するスコア2までの3段階で表しました。

具体的には、BMIについては、18.5~24.9(普通体重)をスコア2とし、25.0~29.9(肥満1度)はスコア1、30.0以上(肥満2度以上)または18.5未満(低体重)をスコア0としました。喫煙歴については、喫煙歴なし、または禁煙して10年超が経過していた人をスコア2とし、禁煙から10年以下をスコア1、現在も喫煙している場合をスコア0としました。

余暇での身体活動(ウオーキング、ジョギング、サイクリング、球技、ダンス、太極拳、水泳、ジムでのエクササイズなど)の頻度と平均実施時間については、ガイドラインが推奨しているレベル、すなわち、「中強度の運動を週に150分以上または高強度の運動を週に75分以上」をスコア2とし、それ以下の運動量であればスコア1、1週間に中強度以上の運動を全くしない場合をスコア0としました。

食習慣は、野菜、果物、肉に注目し、野菜を1日に2回以上食べた場合、果物を1日1回以上食べた場合、肉の摂取が1日1回未満だった場合をそれぞれ1ポイントとして合計し、合計が3ポイントであればスコア2、2ポイントであればスコア1、0または1ポイントであればスコア0としました。睡眠時間については、総死亡の関係がJ字型のカーブを描くことから、夜間の睡眠が6~8時間をスコア2、5~5.9時間または8.1~10時間をスコア1、5時間未満または10時間超をスコア0としました。

これら5要因のスコアの合計に基づいて、登録されていた人たちを、好ましくない生活習慣(スコア0~4)、中間(スコア5~7)、好ましい生活習慣(スコア8~10)の3群に分類しました。降圧薬の使用については、調査時点より前の2週間以内に服用していた人を使用ありとしました。

■薬と好ましい生活習慣で、死亡やがんのリスクが7割減

分析に影響を及ぼす可能性のある要因として、年齢、性別、学歴、飲酒習慣、高血圧の罹病期間、糖尿病または心血管疾患の有無、脂質降下薬(コレステロールや中性脂肪を下げる薬)の使用などに関する情報も得て、それらを考慮した上で分析しました。

最終的な分析対象は、登録時点でがんではなく、必要な情報がそろっていた高血圧患者1万4392人(平均年齢65.6歳、50.6%が男性)になりました。追跡期間の中央値は7.3年で、その間に2015人が死亡していました。761人が心血管疾患、525人ががんによる死亡でした。

降圧薬の使用と生活習慣の組み合わせが、総死亡リスク、心血管疾患による死亡リスク、がんによる死亡リスクに及ぼす影響に関する分析では、降圧薬を使用しておらず、生活習慣も好ましくなかった(スコア0~4)人たちを参照群としました。

このグループと比べて、最もリスクが低かったのは、降圧薬を使用しており、かつ好ましい生活習慣(スコア8~10)を持続していたグループで、約7割の減少が見られました(表1)。一方で、降圧薬を使用しつつも生活習慣は好ましくなかったグループでは、参照群に比べて心血管疾患による死亡リスクとがんによる死亡リスクに有意な低下は見られませんでした。

表1 降圧薬の使用と生活習慣が死亡リスクに及ぼす影響

(データ出典:JAMA Netw Open. 2022;5(2):e2146118.)
© NIKKEI STYLE(データ出典:JAMA Netw Open. 2022;5(2):e2146118.)

生活習慣スコアを横軸に、死亡リスクの低下幅を縦軸にして、グラフを作成すると、降圧薬を使用していた集団と使用していなかった集団の両方において、生活習慣スコアが上昇するほど、総死亡リスク、心血管疾患による死亡リスク、がん死亡リスクが低下することが明らかになりました。

著者らは、経時的な生活習慣の変化が死亡リスクに及ぼす影響についても検討しました。対象は、Dongfeng-Tongjiコホートに参加した時点と2013年の両方で評価を完了していた6863人です。その結果、当初は好ましくない生活習慣だった人が、その後、中間または好ましい生活習慣に分類されるスコアまで生活改善を行うと、それ以降の総死亡と心血管疾患による死亡のリスクは50%近く低下することが示されました(表2)。

表2 生活習慣の変化と死亡リスク

(データ出典:JAMA Netw Open. 2022;5(2):e2146118.)
© NIKKEI STYLE(データ出典:JAMA Netw Open. 2022;5(2):e2146118.)

適正な体重を維持し、喫煙せず、推奨されているレベルの運動を行い、健康的な食事をとり、適度な睡眠をる、という好ましい生活習慣を継続しつつ、降圧薬を服用する。これが、高血圧の成人患者の早すぎる死の予防に役立つことが、今回の研究で明らかになりました。死亡リスクを下げるためには、降圧薬の使用だけでは不十分で、長期にわたって好ましい生活習慣を持続することが重要であると言えそうです。

[日経Gooday2022年5月2日付記事を再構成]

大西淳子

医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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