太るだけじゃない! 軽視してはいけない「夜食症候群」の“怖すぎる”リスク【医師が解説】
夜食症候群とは……遅めの夕食・夜食で肥満等のリスク増
名前の通り、夜遅くに多くの量の食事をとってしまう「夜食症候群」。1日の摂取カロリーのうち、25%以上を夕食および夜食で摂ることを言います。さらに、夜食症候群の状態が悪化すると、睡眠中に起きて、何かを食べたくなることもあり、実際に食べてしまうことも。習慣化してしまうと、ダイエットなどが成功しにくくなることはもちろん、肥満などのメタボリックシンドロームの原因にもなるため、厚生労働省も注意を呼びかけています。
また、夜食症候群は30から40代の働き盛りの男性に多いことも言われており、日々のストレスを食欲で解消している場合の結果として、夜食症候群になっている場合もあり、本人が自覚してないこともあるかもしれません。
体の中には、脂肪を溜める脂肪細胞があり、この脂肪細胞は、体の現状を維持するために、食欲を抑制したり、エネルギー代謝を促進するレプチンというホルモンを出したりしています。
夜遅い食事が習慣化すると、このレプチンの作用が低下するため、食欲が増し、さらに夜食が食べたくなってしまう上、エネルギー代謝の低下により、肥満にもなりやすくなってしまうのです。
夜食のリスクはこれだけにとどまりません。睡眠中は代謝が低下するため、寝る前の食事は余分なエネルギーとなり脂肪として蓄積されます。また、夜間は消化管の吸収が良くなる時間帯でもあるのです。
飲酒と夜食の負の関係……飲み会、晩酌が多い人は要注意
さらに気をつけたいのが飲み会が多い人や、晩酌など夜の飲酒習慣がある場合。お酒などのアルコール飲料は、胃への血流がよくなり、消化酵素が多く分泌され、動きもよくなるために、胃の内容物は腸に流れます。胃が空になると、当然ながら食欲が増します。さらにアルコールは、血液中の糖分を減らすインスリンの作用を強めますので、血液中の糖分が少なくなります。つまり、ただ空腹を感じるだけでなく、甘い物や炭水化物を食べたくなってしまうのです。
炭水化物を中心とした夜食を取ってしまうことで、高血糖を起こし、これは糖尿病の危険性につながります。寝る前の高血糖状態は睡眠中も続いてしまうために、睡眠障害も引き起こします。夜寝る前にお酒と一緒につまみなどを食べてしまうのも夜食症候群の一因になります。
夜食症候群が増加している原因
今、私たちの身の回りには、24時間営業のコンビニを始め、多くの深夜営業の店が当然のようにあります。そうした店舗で深夜に働いている人も増えているということですし、それらの店の利用者も増え、生活時間のボーダレス化が進んでいます。朝食欠食者を対象にした国の調査によると、40代男性の36.6%、女性の19.2%が、21時以降に夕食を摂っていることがわかりました。さらに、男性全体では、10.8%もの人が23時以降に夕食を摂っていると報告されています。つまり、遅い夕食を摂る人が多く、その傾向は男性に強いといえます。
女性がやや少ないのは、ダイエットを意識している割合が男性より多いからかもしれません。
いつでも、食べ物を買うことができる環境、夜遅くまでの仕事をすることで、全体的に夜食症候群が増えているといえます。
夜食症候群が原因で起こる病気・健康リスク
肥満からメタボリックシンドローム、高血糖などから糖尿病、高コレステロール血症などから動脈硬化、高血圧など、まさに生活習慣病になり、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などの心血管の病気を起こすことになります。夜食症候群と思ったら、まずは、食生活を見直す必要があります。「太らない夜食」に似ている? 夜食症候群の直し方・対策法・食事法
まずは、食事時間を早くすることができないかどうか生活を見直しましょう。できれば、寝る2時間前には食事を終えておきたいものです。夜食として食べるにしても低脂質、低炭水化物で消化に良い良質なタンパク質を含むものを選ぶようにし、カロリーを抑えておきましょう。1日の食事バランスも、できれば、朝食をしっかりと摂るようにしましょう。
残業が避けられない時には
・残業前に軽食を摂っておく
・残業後に食べるものは考えて選ぶ
ことが大切です。
残業後に食事を取る場合、魚の練り物、豆腐、おでんなどタンパク質を中心とした食材、春雨やコンニャクなどの満腹感が得られやすいカロリーの少ない食材を選ぶようにしましょう。
遅い時間に食べ過ぎてしまうことを防ぐためにも、残業がある日には昼食をしっかりと摂っておくようにすることも大切です。生活習慣や仕事の時間はすぐには変えられないかもしれませんが、健康に直結する毎日の食生活、できることから自分でできる対策を取っていきましょう。
▼清益 功浩プロフィール小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。