塩を入れないでパスタを茹でるとどうなるの? 意外と知らない、茹で汁に「塩を入れる」理由
パスタを茹でるとき、なぜ塩を入れるのか?
ある雑誌の仕事で「パスタを茹でるときに、なぜ茹で汁に塩を入れるのか」について調べていました。塩を入れて沸点を上げる、とか麺にコシを出す、などと言われることもありますが、調べてみると、そういった効果を出すには大量の塩が必要で、どうも間違いのようです。結局、塩を入れる理由は麺に味をつけるためのよう。ならば茹で上げたパスタに塩をふって和えても同じではないか。そう思って試してみた結果がこちら。面白いことがわかりました。
パスタを茹でる材料(2人分)
パスタ:200g塩:24.3g(茹でたパスタの重量の0.8%)
水:2リットル+2リットル
パスタの作り方
実際にパスタを茹でて検証してみました。▼1© All About, Inc.
まずひとつの鍋に水2リットルと24.3gの塩を入れて火にかけます。以前取材でいくつかの東京のイタリア料理店で聞いたところ、1.2%の濃度の塩水で茹でているところが多かったので、それに倣いました。もう一方の鍋は2リットルの水だけを入れて沸騰させます。
▼2© All About, Inc.
沸騰したら2つの鍋にパスタを入れて中火で茹で、袋に書かれた時間の1分前に引き上げます。ここで塩を入れたほうが浮力がついてパスタが浮きやすくなり、よりくるくると鍋のなかで踊るのでは、と考えました。
実際、そんなふうに見えないこともないですが、観察者バイアスによって「思い込みが眼を曇らす」ということもありますので、ここで明確な差を示すことはできません。
▼3© All About, Inc.
塩なしで茹でたパスタは引き上げてすぐに重さをはかり、重量の0.8%程度の塩をします。これは水島弘史先生の調理の科学に倣ったものですが、結果として塩水で茹でたパスタとだいたい同じ程度の塩分になったと思います。
▼4© All About, Inc.
いよいよ、味比べです。食べるのは筆者と妻、という非常に身内感漂うテストですが、一応二重盲検にして、バイアスがかからないようにしました。
▼5© All About, Inc.
結果です。妻は、一方を「塩が中まで染みている感じ」と言い、筆者も一方は角が立ったような塩味を、もう一方はまろやかな塩味を感じました。
もうお分かりかと思いますが、二人とも、塩茹でしたほうが、塩味に丸みがあり、おいしいと感じました。コシはどちらもほとんど変わらないようでした。ここでにんにくオイルでパスタを炒め、もう一度味見をしましたが、結果は同じでした。ここまでは、当たり前の結果で面白くないですが、このあと驚くべきことが起こります。
▼6© All About, Inc.
味見をしたパスタを余らせてももったいなので、5~6分そのまま放置した後、今度は二人の子ども4歳と7歳に味見をしてもらいました。すると今度は二人とも、塩なしの水で茹でたほうをおいしいと言ったのです。
そこで、筆者と妻がもう一度両方を味見してみると、子どもたちと同じ結論になったのです。
▼7© All About, Inc.
写真を見てください。白熱光の下で撮ったので、他の写真と少し色が違いますが、明らかに左側が黄色っぽいのがわかりますでしょうか? この黄色いほうが塩なしで茹でたものです。そしてこちらのほうが伸びにくいのです。
通常の茹で方をした右側の麺はすっかり伸びてクタクタですが、左はまだコシが残っています。なので、皆、左をおいしいと感じたのだと思います。
パスタの茹で汁に塩を入れる理由……結論!
結論は以下のようになりました。▼塩水で茹でたパスタのほうがおいしいただし、差はわずかなもの。また塩水で茹でる場合は24gも塩を使い、一方、塩なしで茹でた場合はわずか2g弱で済みます。塩を節約したければ塩なしで茹でるのも手でしょう。
▼水だけで茹でたほうがパスタが伸びにくい作ってすぐ食べない場合は水だけで茹でたほうがいいかも知れません。少し、パスタのコシが長持ちします。ただし、茹で上がって10分も経てばいずれにしても伸びてしまいます。
▼茹で汁にも使い道があるパスタの茹で汁には使い道があります。塩の入ったパスタの茹で汁は、パスタと一緒に菜の花やキャベツ、ブロッコリーなどの具を塩茹でしたり、ペペロンチーノを作るときにフライパンに少量を足して乳化させたり、ソースを伸ばしたり、といろいろ使い道があります。
そういった作業をするのであれば、従来通り、塩水で茹でるほうが、全体の作業がスムーズにいきます。
ネットで調べていると、塩を入れるのは沸点を上げるため、とか、塩なしの水で茹でるとパスタがくたくたになって食べられたものではない、とか、いろいろ書かれています。料理の世界は今も迷信に満ちていますので、自分でいろいろ試して、確かめてみるとよいでしょう。