銀歯治療は時代遅れ 再び虫歯になるリスク高く、歯の寿命も短くなる
「緊急事態宣言が解除されたから、久しぶりに歯医者さんに行かなくちゃ……」。『女性セブン』3月18日発売号に掲載された『「85才でちくわが噛めない人の5年後の生存率0%」に震える!』にはこんな声が多数寄せられている。「咀嚼力と寿命」についての疫学調査をもとに、虫歯や歯周病が全身の疾患と関係するという事実を報じた同記事は大きな反響を生んだ。
しかし、手近な歯科医院に飛び込めばいいというわけではない。『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)の著書があるジャーナリストの岩澤倫彦さんは警鐘を鳴らす。
「歯科医療の技術がめざましく進歩する一方で、歯科医の技量や知識、治療方針には大きな差が生じています。つまり、歯科医によっては時代遅れの処置をされてしまう可能性すらあるのです」
口腔内を治療して体にダメージを受けないためには、どうすべきなのだろうか。
成人の7割に銀歯が入っている
まず知っておきたいのは歯の治療についての悩みを抱えているのは、圧倒的に女性が多いということ。
「よく歯科治療について相談がありますが、大半は女性からです。特に中高年以上の女性は、歯科医から『あなたにはこの治療がいい』と言われると、疑問があっても尋ねたり断ったりできないまま治療を受けてから後悔する傾向が強い。一部には患者を言いくるめ高額な治療に誘導して利益を上げる歯科医も存在するので注意が必要です」(岩澤さん)
そのうえ、体質においても女性は歯にトラブルをかかえやすい要因がある。岡田やよい歯科健診クリニック院長の岡田弥生さんが解説する。
「注意すべきは閉経前後です。女性ホルモンの分泌量の減少に伴い、唾液量も減ってしまう。唾液には酸性に傾いた口の中を中和したり、再石灰化の際に必要となるカルシウムなどを補給したりして口腔内を健康に保つ働きがあるため、唾液が減ることで虫歯や歯周病にかかりやすくなります」
そんなリスクにさらされる中で虫歯になってしまった場合、まず選択肢として浮上するのが患部を削って詰め物をする治療だ。なかでも一般的なのは銀歯治療。日本の成人の7割が銀歯を保有しているという調査結果もあるほどだが、岩澤さんは「銀歯は先進国では時代遅れ」と断言する。
「いまだに銀歯治療を行っているのは先進国で日本くらい。なぜなら詰め物をするために土台となる歯の健康な部分も削らなければならないからです。そのうえ、精度が低い銀歯の場合、隙間から虫歯の原因菌が侵入し、再度虫歯になることも非常に多い。つまり治療したことによってかえって、歯の寿命が短くなるリスクもあるのです。
ほかに選択肢のなかった昭和の時代なら銀歯が最善の選択だった可能性もありますが、令和のいま、あえて選ぶメリットはほぼないといっても過言ではありません」
悪影響は口腔内にとどまらない。
「銀歯の原材料であるパラジウムなどの金属に体が反応してアレルギーを起こし、さまざまな不調が出てくることがすでに30年ほど前、旧厚生省の調査で判明しました。女性の場合、体調が思わしくないときは更年期障害でなく、銀歯による金属アレルギーの可能性もあります」(岩澤さん・以下同)
頭痛や肩こりなど「更年期に伴う不調」だと思っていた諸症状が、10年以上前に埋め込んだ銀歯を除去したことで治まったというケースもあり軽視はできない。また、こうした不調は免疫力の低下にもつながる。
デメリットがある銀歯に代わって台頭しているのが「コンポジット・レジン修復」という治療法だ。
「プラスチック系素材のレジンは、歯の色に近い乳白色のペースト。虫歯部分だけを削ってから接着剤を塗りレジンを充填、ライトで紫外線を当て硬化させます。小さな隙間にも入り込んでピッタリと接着されるこの治療法は、歯を削る量が最小限で済むのがメリット。1980年代にレジン治療はすでにありましたが当時は『欠ける』『割れやすい』と敬遠されました。その後、レジンの素材が改良されて、銀歯と同等の耐久性が科学的に証明されています」
レジンで治療した歯は天然の歯とほとんど見分けがつかず、銀歯のような金属アレルギーのリスクもない。患者にとってメリットが大きい治療にもかかわらず、普及が遅れたのには理由がある。
「レジン修復は手間と時間がかかるのに保険点数が低く、歯科医院の利益が少ない。一方、銀歯治療はレジン修復より保険点数が高く、歯型を取った後の作業を歯科技工士に任せられるため、効率的です。つまり、レジン修復より銀歯の方が歯科医にとって負担が少ないうえ、儲かる治療だったのです」
現在は銀歯の材料となるパラジウムなどの金属価格が高騰するなど、一概にはいえなくなっているものの、患者にとってデメリットの多い治療に押しやられていたことは否定できない。
しかし、手近な歯科医院に飛び込めばいいというわけではない。『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)の著書があるジャーナリストの岩澤倫彦さんは警鐘を鳴らす。
「歯科医療の技術がめざましく進歩する一方で、歯科医の技量や知識、治療方針には大きな差が生じています。つまり、歯科医によっては時代遅れの処置をされてしまう可能性すらあるのです」
口腔内を治療して体にダメージを受けないためには、どうすべきなのだろうか。
成人の7割に銀歯が入っている
まず知っておきたいのは歯の治療についての悩みを抱えているのは、圧倒的に女性が多いということ。
「よく歯科治療について相談がありますが、大半は女性からです。特に中高年以上の女性は、歯科医から『あなたにはこの治療がいい』と言われると、疑問があっても尋ねたり断ったりできないまま治療を受けてから後悔する傾向が強い。一部には患者を言いくるめ高額な治療に誘導して利益を上げる歯科医も存在するので注意が必要です」(岩澤さん)
そのうえ、体質においても女性は歯にトラブルをかかえやすい要因がある。岡田やよい歯科健診クリニック院長の岡田弥生さんが解説する。
「注意すべきは閉経前後です。女性ホルモンの分泌量の減少に伴い、唾液量も減ってしまう。唾液には酸性に傾いた口の中を中和したり、再石灰化の際に必要となるカルシウムなどを補給したりして口腔内を健康に保つ働きがあるため、唾液が減ることで虫歯や歯周病にかかりやすくなります」
そんなリスクにさらされる中で虫歯になってしまった場合、まず選択肢として浮上するのが患部を削って詰め物をする治療だ。なかでも一般的なのは銀歯治療。日本の成人の7割が銀歯を保有しているという調査結果もあるほどだが、岩澤さんは「銀歯は先進国では時代遅れ」と断言する。
「いまだに銀歯治療を行っているのは先進国で日本くらい。なぜなら詰め物をするために土台となる歯の健康な部分も削らなければならないからです。そのうえ、精度が低い銀歯の場合、隙間から虫歯の原因菌が侵入し、再度虫歯になることも非常に多い。つまり治療したことによってかえって、歯の寿命が短くなるリスクもあるのです。
ほかに選択肢のなかった昭和の時代なら銀歯が最善の選択だった可能性もありますが、令和のいま、あえて選ぶメリットはほぼないといっても過言ではありません」
悪影響は口腔内にとどまらない。
「銀歯の原材料であるパラジウムなどの金属に体が反応してアレルギーを起こし、さまざまな不調が出てくることがすでに30年ほど前、旧厚生省の調査で判明しました。女性の場合、体調が思わしくないときは更年期障害でなく、銀歯による金属アレルギーの可能性もあります」(岩澤さん・以下同)
頭痛や肩こりなど「更年期に伴う不調」だと思っていた諸症状が、10年以上前に埋め込んだ銀歯を除去したことで治まったというケースもあり軽視はできない。また、こうした不調は免疫力の低下にもつながる。
デメリットがある銀歯に代わって台頭しているのが「コンポジット・レジン修復」という治療法だ。
「プラスチック系素材のレジンは、歯の色に近い乳白色のペースト。虫歯部分だけを削ってから接着剤を塗りレジンを充填、ライトで紫外線を当て硬化させます。小さな隙間にも入り込んでピッタリと接着されるこの治療法は、歯を削る量が最小限で済むのがメリット。1980年代にレジン治療はすでにありましたが当時は『欠ける』『割れやすい』と敬遠されました。その後、レジンの素材が改良されて、銀歯と同等の耐久性が科学的に証明されています」
レジンで治療した歯は天然の歯とほとんど見分けがつかず、銀歯のような金属アレルギーのリスクもない。患者にとってメリットが大きい治療にもかかわらず、普及が遅れたのには理由がある。
「レジン修復は手間と時間がかかるのに保険点数が低く、歯科医院の利益が少ない。一方、銀歯治療はレジン修復より保険点数が高く、歯型を取った後の作業を歯科技工士に任せられるため、効率的です。つまり、レジン修復より銀歯の方が歯科医にとって負担が少ないうえ、儲かる治療だったのです」
現在は銀歯の材料となるパラジウムなどの金属価格が高騰するなど、一概にはいえなくなっているものの、患者にとってデメリットの多い治療に押しやられていたことは否定できない。