配偶者との死別に悲しむ男性にかけてはいけない「3つのNGワード」

妻への依存度が高い夫ほど喪失感は大きい(写真:H.Kuwagaki/PIXTA)
配偶者を失えば悲しいのは当たり前だが、夫婦でどちらかが先に死ぬのなら、「自分が先に死にたい」という女性が50%なのに対し、男性は78%に上るという。それならば、もしものときのために、妻が夫にできることは何なのだろうか。夫婦が元気なうちにやるべきことをいくつか紹介する。
●終活について話をする
エンディングノートを記すのがいちばんだが、日頃の何気ない会話の中で、墓所や葬儀についての自分の意思を伝えておこう。
●ひとり暮らしができるように、サポートする
日常生活で妻への依存度が高い夫ほど、喪失感は大きくなる。料理の作り方や、何がどこにあるかなど、ひとりになってから困らないように、一緒に整理しつつ教えておくといい。
●自分の素直な気持ちを伝える
妻が亡くなってから「感謝の気持ちを伝えておけばよかった」と、後悔する人が多い。妻の方から気持ちを伝えると、それに呼応して素直な言葉が出やすくなり、夫の心を軽くすることにつながる。2007年に「遺族外来」を設置し、死別のつらさに悩む遺族の治療とケアに取り組んでいる、埼玉県医科大学国際医療センター精神腫瘍学科教授の大西秀樹さんは、「死別から数週間~数年は、悲しみが深くなるが、喪失感を抱くのは決して悪いことではない」と言う。
「記念日などの記憶とともに悲しみがぶり返すのも自然なこと。時間の経過とともに楽しかったことを思い出せるように、笑顔の写真などを記録に残しておくといいですね」(大西さん・以下同)
妻に先立たれた男性は早死にする確率が高い
うつ病は、人口の3~7%に見られるが、遺族に限れば、死別後7か月目で23%、13か月目で15%に認められ、1年以内の自殺率が66倍になるという報告がある。また、55才以上の男性を対象に、配偶者を亡くした人と生存している人を比べた研究では、死別後の半年間で、配偶者を亡くした人の死亡率が40%近く上昇したという報告もある。
「寂しさを紛らわすために酒やたばこの消費量が増え、食生活の変化で健康を害する人もいます。持病の悪化も指摘されており、医療機関を受診せずに深刻化するケースも多いですね」しかし、遺族外来を訪れるのは、8割以上が女性で、男性は2割にも満たない。それは、男性の悲しみやストレスが女性より少ないのではない。受診するのをためらう人が多いのだ。だからこそ妻が生きている間に夫がやるべきことがある。
「日頃から、ちょっとした悩みやストレスを打ち明けられる人や場所を整えておくことが大切です。闘病中から『患者の家族会』に参加する、いざというときのために『遺族会』について調べておくなど、同じ境遇の人たちと接し、吐き出せるように準備しておく。特に、不眠や食欲不振、体力の低下などが著しい場合は、精神科などの専門家に相談するようアドバイスをしておくのもいいでしょう」
悲しみが深刻化し、うつ病を発症させないために、事前準備をしておいても無駄にはならない。
周囲は、声をかけるより寄り添うだけでいい
また、身近に妻を亡くした遺族がいる場合、つらそうな姿を見ると励まし、助言したくなることがあるが、よかれと思ってかけた言葉がかえって遺族を傷つけ、症状を深刻化させることもある。たとえば、以下の3つ。
●「がんばってください」
日常的によく使われるが、「この言葉には、『あなたはもっとやるべき。私は手伝わないけど』という意味が隠れています。言われた人は、突き放された気になって、つらくなるのです」
●「大丈夫ですか?」
遺族に探りを入れているだけで、何の慰めにもならない。「気持ちの整理がついていなくても、大丈夫と答えてしまう人もいるでしょう。聞かれることで自分が落ち着いていないことを再認識し、つらくなってしまったという遺族もいらっしゃいましたね」
●「大往生でしたね」
慰める意味で「大往生」と言うことがあるが、「つらい闘病生活を知る遺族に対しては使わない方がいい。ただし、本人が使った場合は使ってもいいでしょう」。かけていい言葉は、「大変でしたね」という共感の言葉だけ。ただ寄り添い、そばにいて、自ら話し始めるまで待つことも大切だ。