お餅を喉に詰まらせないために!高齢者も安心してお餅を楽しむヒント【まとめ】
この年末年始は、久しぶりに帰省する人も多いかもしれない。お雑煮などでお餅を食べる機会が増えるこの時期、毎年、お餅を喉に詰まらせてしまったというニュースが流れる。誰にでも起こりうることだが、高齢者はより注意が必要だ。記者の父(89才)は、米どころ新潟県の出身ということもあって、お餅が大好物。年始用に用意したお餅を早速食べ始めた。
一度に4個もペロリと平らげる様子に、娘の私はひやひやする。思わぬ事故を起こさぬために、「お餅が喉の詰まったときの対処法」など、高齢者も安心してお餅を楽しむためのヒントを識者に取材した記事を改めて紹介する。
餅が喉に詰まらせたすぐに救急車を呼ぶ
「食べたり、飲み込んだりする機能が低下している高齢者の場合、誤嚥(ごえん)と共に、窒息も起こりやすく、とくに毎年、お正月から春にかけてはお餅を食べることによる窒息事故が起きています。
お餅以外にも、喉に張り付きやすい食品や水分量が非常に少ない食べ物は注意が必要です。また、どのような食べ物も、一口の量がその人の『噛み』や『飲み込む力』に合っていない場合も窒息を起こします」
こう語るのは、日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学教授、口腔リハビリテーション多摩クリニック院長の菊谷武さんだ。
窒息が起こると、息が荒くなるという。自己流の対処法をするのではなく、即座に救急車を呼ぶこと。
「食べ物を詰まらせてしまった場合は、即座に救急車を呼びましょう。119番に電話をし、窒息の危険を伝えると、救急隊員が駆けつける前にするべきことを教えてくれます。水を飲ませるのは誤った対処法です。絶対にやめましょう。そのままの姿勢で背中を叩くのも余り意味がありません。」(菊池さん)
介助者が後ろにまわり背中の中央より少し上あたりを強く叩くと、誤嚥した物が吐き出させることができる場合もあるが、すべて吐き出せず、かけらが残っている可能性があるので、様子を見るなど、注意が必要という。
餅がのどに詰まった時の対処法まとめ
●喉に詰まったらすぐに救急車を呼ぶ
●水を飲ませるのは絶対NG
●そのままの姿勢で背中を叩くのは意味がない
次にご紹介するのが、固くなった餅をやわらかくする方法だ。
水分補給と加熱でやわらかさ復活
餅が硬くなるのは、餅に含まれるでんぷんの老化が原因。
「でんぷんは数時間放置しただけで水分を失い硬くなります。やわらかくするには、餅に少し水をつけて加熱してください」と語るのは、女子栄養大学短期大学部の食物栄養学科准教授豊満さんだ。
加熱は電子レンジか、鍋でゆでるかによって仕上がりが変わる。
「電子レンジ加熱では、表面がやや乾燥するものの中はやわらかくなり、一方、鍋でゆでると全体がトロトロになります。食感の好みで選ぶとよいでしょう」(豊満さん)
保存は冷凍がおすすめ。冷蔵は餅が最も硬くなる温度のため避けて、冷凍でも1か月以内に食べ切りたい。
電子レンジで手軽にやわらかく
【1】水にくぐらせる
ボウルにためた水に餅全体をくぐらせる。長くつけると加熱後に水っぽくなるため、サッと湿らせる程度でよい。
【2】平皿にのせてラップをかける
餅を平皿にのせてラップをふんわりとかける。水分を逃がさずに効率よく温めるために、端までぴったりと閉じる。
【3】電子レンジで温める
600Wの電子レンジなら2分を目安に温める。加熱時間は餅の状態を見ながら調整を。
出来上がり
でんぷんの老化が激しい表面は硬さが少し残るが、中は充分やわらかくなりおいしく食べられる。
二重に包んで冷凍臭を予防
【1】小分けにしてラップに包む
餅は小分けにしてラップでしっかり包む。1個ずつか、2~3個なら重ねずに横並びで包むとくっつきにくい。
【2】ジッパー付き保存袋に入れる
ラップで包んだ餅をさらにジッパー付き保存袋に入れる。二重に包むことで、冷凍臭をある程度防ぐことができる。
【3】冷凍室に入れる
冷凍室に入れて保存する。解凍せずに加熱してもよいが、事前に冷蔵室に少し置いてやわらかくすると時短になる。焼いて食べる時は、中までよく火が通るように火加減は弱めにするとよい。
鍋でゆでればトロトロに
【1】鍋に湯を沸かす
鍋にたっぷりの水を入れて火にかけ、煮立ったら餅を入れる。
【2】弱火でゆでる
餅2個なら弱火で2~3分程度ゆでる。餅がやわらかくなったら形が崩れないように取り出す。
出来上がり
溶けるようによく伸びてやわらかくなる。
教えてくれた人
豊満美峰子(とよみつみおこ)さん/女子栄養大学大学院了。同短期大学部の食物栄養学科准教授。調理学を専門に教鞭をとる。
撮影/下重修
要介護度が進み、嚥下機能が衰えてきた人には、お餅のような食感で喉に詰まりにくいレシピをご紹介するのでぜひ活用してほしい。
喉に詰まらないお餅で「お汁粉」~10分でパパっと介護食作り
噛み切りにくく、喉にに詰まりがちなお餅は、介護食には不向き。そこで、おかゆを使った簡単“お焼き”をお餅風にアレンジします。
日々の介護食作りをラクにするアレンジレシピを、介護食の料理教室開催してたカフェ『Kamulier(カムリエ)』(現在は閉店)の店長・志水香代さんに教えてもらいました。
おかゆで作ったお餅風おやきは口の中でふわっとほどける
「おかゆをお団子状にまとめてサッと焼いた“お焼き”は、お餅みたいなモチモチ食感なのに、ふわっと口の中でほどけ、飲み込みやすく仕上がります」(志水さん、以下同)
おかゆは、市販のものでも、自分で炊いたものでもOK。お米の粒感が残らないようにやわらかく仕上げたものを使って。
材料(1人分)
白がゆ(市販)
1袋(200g)
練りあん 100g
水 75g
溶き卵 20g
片栗粉 20g
くず粉 2g
水 10g
サラダ油 10g
作り方
【1】ボウルにおかゆ、溶き卵、片栗粉を入れ、よく混ぜる。
【2】①を一口大にまとめ、油適量を引いたフライパンで両面をサッと焼く。
【3】鍋に練りあんと水を入れて火にかけ、あんを溶かしながら温める。
【4】くず粉を水で溶いて回し入れ、沸騰させてとろみをつける。
【5】器に②を入れ、④をかける。
ポイント!
よく混ぜ合わせたおかゆをフライパンで“お焼き”に
おかゆと卵を混ぜ、よく混ぜてなめらかな食感に。これを丸くまとめ、両面をサッと焼くとお餅風お焼きに。焼き過ぎると固くなるので注意して。
くず粉は沸騰させてとろみをつける
お汁粉のとろみをつけるのに、くず粉を使用したが、ない場合は片栗粉でも代用可。くず粉は、しっかり水で溶かないとダマになりやすく、沸騰させないととろみがつかないなど、片栗粉に比べるとやや調理に手間がかかるが、くず粉でつけたとろみは、なめらかな口当たりで、喉越しもよいため、甘味にはよく利用される。
レシピ提供/『Kamulier』 動画撮影/櫻井健司
構成/介護ポストセブン編集部