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「魚の骨」が喉に刺さったらどうする!?「抜けない」ときは何科を受診すればいい?【管理栄養士が解説】


魚の骨は危険? 内視鏡手術や全身麻酔による摘出例も……

海に囲まれた日本人は、古来から「魚」を食べて生活していました。ところが、近年、魚離れが進んでいます。平成18年には肉の摂取量が魚の摂取量を追い抜き、令和元年には1日当たりの摂取量は肉が103g、魚が64.1gと報告されています(※『国民健康・栄養調査』)。

日本人の魚離れの原因として、平成20年度の『水産白書』では次の3つが挙げられています。

1. 子どもが魚を好まない

2. 調理が面倒

3. 肉より割高

「子どもが魚を好まない」「調理が面倒」という2点には、「魚には骨があるから」という共通の理由があるようです。実際、魚の骨が喉などに刺さってしまう事故は少なからず発生しています。

特に、魚の骨が刺さってしまうのは4歳以下の幼児に多く、カレイやヒラメの骨が刺さってしまった場合には内視鏡下摘出術や全身麻酔下での手術が必要になることが多いのも報告されており「魚を食べること」には危険も伴います。(詳しくは、東北大学による「魚の骨が刺さる事故の実態を詳細に調査」をご覧ください。)

一方で、魚にはドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)など体に有益な栄養素がたっぷり含まれています。魚を手軽に安全に、おいしく食べられれば……と考える人も少なくないでしょう。

魚の栄養素をもっと手軽に! 骨抜き不要の「骨抜き魚」を活用

魚を調理するには、うろこ取りや、3枚におろすなどの下処理が必要になります。魚の下処理には、若干の技術が必要です。この下処理の際、骨抜きを上手に使って、骨を完全に取り出すことができれば食卓で安全に魚を食べることができます。

2021年9月に終了してしまいましたが水産省の「魚の国のしあわせ」プロジェクトでは、「ファストフィッシュ」というプロジェクトがありました。

「ファストフィッシュ」とは、調理が簡単で、価格も安価で、気軽に日常の食生活に取り入れることができるといった視点で選定された水産物です。そのまま食べられる加工品だけでなく、骨を抜いて真空パックし、フライパンで焼くだけの状態にした水産品や、そのままサラダで食べられる商品などが選定されていました。

また、この「ファストフィッシュ」に選定されていない商品でも業務用の「骨抜き魚」などもあります。業務用の「骨抜き魚」は、東南アジアなどで骨抜き専従のスタッフが「日本向けとして丁寧に」骨抜きをした魚を輸入していることが一般的です。

しかし、魚にも個体差があるため、ごくまれに抜き損ねがあるようです。そのため、最近では日本国内でX線で骨が残っていないことを確認してから提供している業者もあります。

ただし通常の魚の切り身よりも、骨抜きの魚は手間がかかるため、割高になることが多いです。安全性や便利さを取るかコストを取るかを天秤にかけることになるかもしれませんが、TPOに合わせて選択するとよいのではないかと思います。

自宅での魚の骨抜きは練習あるのみ! 上手に下ごしらえを

魚の骨抜きを簡単に行う方法は、残念ながらありません。ただし、魚の骨抜き用のピンセットを使いやすいものにしたり、魚の骨の向きを覚えるなど、コツをつかむことでかなり上手になるはずです。

魚の骨抜きを上手に行うためにはYouTubeなどで「骨抜き」「魚の下処理」などと検索するとわかりやすい動画が出てくると思います。

安全のために1本も魚の骨を残したくない場合、上述のようにX線で検査をした骨なし魚を購入するか、大きな魚であれば半身の中心の血合い骨を両脇からカットし、完全に骨がついている部位を取り除いて用いる調理法を選ぶかです。

この調理法は「わたす」といいます。魚の種類や大きさによって、上手に下ごしらえをしてください。

「魚を食べないリスク」を回避! 本当においしい魚で気づく魚の魅力

魚には骨があり、調理や食べるときに気を付けなければ、病院を受診するようなリスクもあることは事実です。しかし、近年の日本人に肥満やメタボリックシンドロームなどが増えているのは、魚離れもひとつの原因であるとされています。

日本人の食事で理想的だったとされる昭和50年は肉を64.2g、魚を94g摂取していました(※『国民栄養の現状』 )。

全国漁業協同組合連合会(JF)はこの現状を問題視しており、漁師自慢の「プライドフィッシュ」を選定しています。プライドフィッシュは各都道府県のJFが四季折々の本当においしい魚を選ぶものです。プライドフィッシュは「JFおさかなマルシェ」にてインターネットで購入することができます。

骨なしの魚を使うことも安全対策のひとつにはなりますが、「魚には骨があるけれど、骨を避けて食べる必要があっても魚が食べたい」と思えるような、おいしい魚料理を手軽に食べられるような環境づくりをしていくことで、魚を上手に食べられるよう練習することも大切なのかもしれません。

魚の骨が刺さってしまった場合の対処法・正しい抜き方

最後に、万が一、骨が喉に刺さってしまった場合は、どうすればよいのでしょうか? 昔からよくいわれているような「ごはんを丸飲みして取る」という方法は誤りです。自分で無理に取ろうとすると、かえって深く刺さってしまうこともあります。

小さい骨で我慢できるようなごく軽い痛みであれば、自然に取れるまで様子をみてもいいですが、鯛の骨が刺さったり、我慢できないほど痛かったりする場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。

子どもの場合、小児科はどうかと考える人もいるかもしれません。魚の骨が喉に刺さってしまう事故は小児に多いですが、耳やのどを診るための専用の器具があるため、小児科よりもできれば耳鼻咽喉科の受診がおすすめです。

魚の骨は確かに少し手間もかかり、刺さると怖いですが、魚料理は日本の伝統食でもあります。骨なし魚を使ったり、骨のある魚を上手に食べる練習をしたりして、健康的な食文化を後世に残していきたいものですね。

▼平井 千里プロフィールメタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。

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